皮膚科分野では、難治性皮膚潰瘍治療としてPRP治療が、聖マリアンナで平成23年に先進医療として承認されている。皮膚潰瘍は陰圧療法のほか、骨髄間質細胞や脂肪細胞などから採取した幹細胞を用いた治療などが行なわれている。PRP治療は、ほかの治療では効果が得られず、切断しかない難治性皮膚潰瘍の患者に対して実施されている。
治療は患者から30~50ml採血し、遠心分離にかけ血小板だけを集め、約10倍に濃縮して患部に塗布する。
「例えば5×5cm程度の潰瘍には、3mlのPRPをアルギン酸のシートに塗布して患部に貼付。これを1 週間に1回の割合で4回実施、治りが悪いときは、さらに4回行ないます。約40例に実施していますが、切断予定の下肢の潰瘍が周囲の血管新生も相まって上皮化し、切断も回避、自力歩行可能になっている方もいます」(井上特任教授)
採血からPRP投与まで1時間弱で実施でき、患者自身の血小板を使うため副作用がない。足の潰瘍では、足の付け根辺りの太い血管が詰まり、先端に血流が流れないPAD(末梢動脈疾患)の患者は適応外だが、ステント挿入で血行改善が見込める場合は治療可能だ。PRPを作るには施設と技術が必要で、粗悪なPRPでは効果が得られない。PRP治療は、難治性皮膚潰瘍治療の選択肢の1つとして期待されている。
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2014年9月12日号