国際情報

朝日新聞批判収まらない理由 読者のWHYに応えていないから

 ついに朝日新聞が「誤報」を認めた。8月5日付朝刊に掲載された「慰安婦問題を考える」特集において、著述業・吉田清治氏(故人)の「済州島で慰安婦を強制連行した」との証言について一部の誤りを認めたのだ。だが、朝日新聞元ソウル特派員のジャーナリスト前川惠司氏は、この特集記事は「読者の疑問に答えます」と見出しをつけながら答えていないために批判が収まらないのだと指摘する。

 * * *
 新聞記事の基本は、WHEN WHERE WHO WHAT WHY HOWの6要素というのは常識だろう。8月5日の朝日新聞は膨大な慰安婦記事の点検結果として、「吉田清治証言の取り消し」などを明らかにした。

 しかし、朝日新聞批判が収まらない理由の一つは「慰安婦問題どう伝えたか 読者の疑問に答えます」などの特集記事が読者のWHYに応えていないからではないか。

 慰安婦支援団体らが日本は加害者だとの宣伝材料にし続け、国連人権委員会が日本非難決議の根拠のひとつにした「吉田清治証言」は虚偽なのに、証言を報じた朝日新聞は、きちんとした措置を取らないと、朝日新聞批判派が訴え続けてきた問題について特集記事は、

〈92年4月30日、産経新聞は朝刊で、秦郁彦氏による済州島での調査結果を元に証言に疑問を投げかける記事を掲載。(中略)東京社会部の記者(53)は産経新聞の記事の掲載直後、デスクの指示で吉田氏に会い、裏付けのための関係者の紹介やデータ提供を要請したが拒まれたという〉

 と明らかにした。ではなぜ要請を拒まれた事実を翌朝の朝日新聞で伝えなかったのかと、読者は思うだろう。掲載していれば、朝日新聞批判派が主張するような事態は避けられたかもしれない。

 今回、取り消した関連記事は16本になるそうだが、チェックした限りでは、うち5本が1992年4月30日以後だった。報じていれば、それらの記事は世に出ず、吉田氏がソウルまで出かけての謝罪パフォーマンスはできなかったかもしれない。

 取材結果を机の中にしまいこんだ記者、記事にするよう指示しなかったデスク。どうしてそうなったのかとの当然の疑問に、朝日新聞の特集記事は答えていない。読者は余計、釈然としない気持ちになるのではないか。WHYを明らかにすると、朝日新聞はさらに追い込まれかねないようなことがあるのかと疑う向きもあるだろう。

※SAPIO2014年10月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

雅子さまが三重県をご訪問(共同通信社)
《お洒落とは》フェラガモ歴30年の雅子さま、三重県ご訪問でお持ちの愛用バッグに込められた“美学” 愛子さまにも受け継がれる「サステナブルの心」
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
「とにかく献金しなければと…」「ここに安倍首相が来ているかも」山上徹也被告の母親の証言に見られた“統一教会の色濃い影響”、本人は「時折、眉間にシワを寄せて…」【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
マレーシアのマルチタレント「Namewee(ネームウィー)」(時事通信フォト)
人気ラッパー・ネームウィーが“ナースの女神”殺人事件関与疑惑で当局が拘束、過去には日本人セクシー女優との過激MVも制作《エクスタシー所持で逮捕も》
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト/目撃者提供)
《前橋・小川市長が出直し選挙での「出馬」を明言》「ベッドは使ってはいないですけど…」「これは許していただきたい」市長が市民対話会で釈明、市議らは辞職を勧告も 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン