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王貞治氏 「力を伝えるための一本足打法」という誤解への解説

 王貞治氏といえば世界の本塁打王だが、そのバッティングへのこだわりは1961年のオフに打撃コーチに就任した荒川博氏と築き上げた一本足打法として結実する。真剣を使った鍛錬は今も語り草だ。王氏が一本足打法について語る。

 * * *
 荒川さんがいなければ僕は今ここに存在していません。荒川さんには本当の練習とは何かを教えられました。キャンプでは朝、グラウンドへ行く前にひと汗かいて、練習から帰ったら風呂に入る前にバットを振った。

 夕飯の後には川上さんのミーティングが午後8時から9時まであったので、その後にも1~2時間はバットを振るという決まりでした。僕は自分が納得するまで荒川さんとマンツーマンでとにかくバットを振った。僕のバッティングの土台、基礎の部分は荒川さんに作ってもらいました。

 その過程で一本足打法が生まれた。よく勘違いされるのですが、これはタイミングを測るために始めたものであって、力を伝えるために一本足にしたわけじゃないんです。僕は高校時代、甲子園でもホームランを打っているようにもともと長打力があった。でも確率が低かったんです。だから速い球を前でさばけるよう、ボールとの距離を測るために足を上げてみた。それが合っていたんだと思う。

 一本足打法で、僕は4年目の1962年から13年連続でホームラン王になりました。常に打撃フォームをチェックしてくれる荒川さんがいたので、とにかくバットの芯で打つことだけを考えていれば良かった。いつも自分を信じて打席に立つことができたんです。

 その意味で最も記憶に残るホームランは、荒川さんがいなくなってからのものなんです。荒川さんが1970年オフに退団してからは、すべて自分でやらなくてはならなくなった。翌1971年のシーズン、初めて陥った大スランプの中で、江夏(豊=阪神)と山田(久志=阪急)から打った2本は今でも忘れられません。

※週刊ポスト2014年9月19・26日号

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