親の介護は切っても切れないものだが、実際はどのような状況で行うものなのだろうか。
「父は昭和3年生まれの戦中世代でしたが、コンプレックスの反動なのか、欧米への憧れが強くて。とくにイギリス旅行で食べた、薄くてサクサクのトーストがとてもお気に入りでした」
精神科医・香山リカさんは、父親の介護を振り返る。
婦人科医をしていたお父様が、介護される側となった。
「慢性腎不全が悪化していったのですが、父が人工透析をしたがらなくて。私は“透析が嫌なら食事制限だからね!”と、母に食事内容をFAXしてもらって逐一チェック。“遠距離介護”ではなく、“遠距離操作”をしていたんです」
実家がある小樽へは月に1~2回帰るのが精いっぱい。父が苦しんでいるのに、自分は東京で何をしてるんだろうと罪悪感にさいなまれた。
「いざ自分の身にふりかかると、患者さんに対するように冷静にアドバイスできない。親を介護すること、看取ることに悩みはつきません。どういうエンディングを迎えたいか、普段から親子で話し合っておくことがお互いのためになるのかなと思います」
※女性セブン2014年9月25日号