日常生活におけるエピソードもまた数多い。大腸ポリープ切除(1995年)に始まり、前立腺がん摘出(2003年)、冠動脈バイパス手術(2012年)と続く陛下の闘病においては、皇后陛下自ら皇室医務主管など医師から日常の食事や生活習慣について注意すべきことなどの説明を受けた。陛下の健康を第一に考え、脂肪や塩分を控えるため、普段の食事作りを担う大膳課職員と直接相談もされたようだ。
さらに陛下に適度な運動も必要と聞いた皇后陛下は、自身の膝の悪化にもかかわらず、一緒にテニスや皇居内の散策を欠かさず続けている。そうした皇后陛下の“献身愛”は時を経るごとに強まったのだと私は感じる。
最近、最もその意思を明確に示されたのは「葬儀の簡素化」ではないか。昨年11月、宮内庁は「今後の御陵及び御喪儀のあり方についての天皇皇后両陛下のお気持ち」を発表。両陛下は陵墓の縮小や火葬について意向を示した。
その中で、陛下が示した「合葬というあり方も視野に入れてはどうか」という思いに対し、皇后陛下は「あまりにも畏れ多い」、「自分が先立った場合、陛下の在世中に御陵が作られることになり、それはあってはならない」と固辞された。確かに、御陵は本来天皇が崩御した後に建てられるものであり、皇后陛下は陛下のお気持ちに深く感謝しつつも、合葬を遠慮したのだろう。
※SAPIO2014年10月号