芸能

花子とアン 「残念至極だった配役」について女性作家が指摘

 作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏は、原作へのことさら深い思いにしばし浸りながら、ドラマを観ていたという。同氏にとって、物語のエンディングはどう映ったか。

 * * *
 いよいよ最終回を迎えたNHK朝ドラ「花子とアン」。この最終週に、サプライズが仕込まれていた。出版のメドも立たず翻訳から何年もが経過し、お蔵入りとなっていた『赤毛のアン』の原稿が、いよいよ陽の目を見るかというクライマックスシーン。

 出版を決断した小鳩書房社長・門倉幸之介を演じたのは、なんと脳科学者・茂木健一郎さんでした。実にトリッキーな配役です。

 そりゃ日本には、文化人が芝居をする「文士劇」というお遊び的な伝統もあるし、茂木さんは『赤毛のアン』のファンということをあちこちで表明してきた。でも、だからといって……半年間も続いたアンのお話のオチがこれ?

『赤毛のアン』の運命が決まる重要なシーンで、小鳩書房社長が延々と吐く素人の棒ゼリフ。思わず耳をふさぎたくなったのは私だけではないはず。その後の番組「あさイチ」でも、NHK解説委員・柳沢秀夫さんがつい「棒読み」と口走ってましたし。

 シャレの効いた登場の仕方ならまだわかる。ただ立っているだけとか、一言二言とかならまだしも。素人が演じるには台詞の量が多すぎ。露出しすぎ。重要なシーンすぎ。演出の仕方も、話のもって行き方も、無理無理だらけ。

 この雰囲気、どこかで見たことがある……。茂木さんの棒ゼリフを聞きながら、私はふと気付きました。そうだ、これはコントだ。

 速成の寸劇、あの感じ。笑いをとる即興劇のあの空気。飛び込みで登場したゲストの素人くささが、むしろ笑いにつながっていくあの感覚。しかし、ここは笑わせるシーンではない。そもそも、笑いをとるドラマではない。大切なクライマックスのはず。

クライマックスという言葉は、あらためて辞書で引くと「最後の最も効果的な箇所」(旺文社英和中辞書)とあります。原語は「傾ける」という動詞に由来するギリシア語klimax(はしごの意)。それを登って頂点に行くこと。つまり、頂点に達すること。でも、これじゃあ頂点に「登る」どころか、下っていませんか?

 テレビドラマが多くの人の気を惹きたいと考えるのはわかるけれど、ふざけてもよいタイミングとそうではないタイミングがあるかと。と、真面目に論じている自分に空しさを感じてしまう。こんなもんさと、笑い飛ばせばよいのでしょうか。

関連記事

トピックス

長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン