幼い頃、『赤毛のアン』の世界にどっぷり没入してしまった私は、今でもくっきりと記憶していることがあります。まず、いきいきとしたアンの姿。しかし浮かぶのはそれだけではない。一つの言葉が、たしかに心に残っているのです。
「虚栄心」。
アンの育ての親・マリラは何度も何度も、アンに対して虚栄心を増長させてはいけない、と言い聞かせていましたね。きっと私以外にも、「虚栄心」という言葉を印象深く受け取った読者はたくさんいたはず。
対して、最終週を迎えた「花子とアン」は、話題をとりにいくトリッキーさ。有名人を突然登場させて盛り上げようという、まさしく「虚栄」的作戦。そのあたり、『赤毛のアン』という作品に対するリスペクトがあまりに薄くて、涙。もしマリラが見ていたら、いったい何と言ったことでしょう。
たとえドラマはフィクションだとしても、そのドラマの元になった作品に対して、制作側がいかに愛情を持って細やかに扱うかが、実は大切なポイントでは? 前回のコラムで蓮子を演じた仲間由紀恵さんを賞賛しただけに、クライマックスで盛り「下がって」しまったとしたら残念です。