ライフ

デタラメ治療の結果 糖尿病で年間3000人以上が失明、足切断

 予備軍を合わせ国内で糖尿病患者は2000万人を超えるといわれるが、その医療では、実に多くの「ウソ」がまかり通っている。そう指摘するのは、高雄病院理事長の江部康二医師だ。自身が糖尿病の内科医が、日本の糖尿病治療の欺瞞を暴く。
 
 * * *
 そもそも糖尿病とは血糖値が高くなる病気のことだ。血糖値が高くなると体内の酸化バランスが崩れ、活性酸素が生じて血管が傷つきやすくなる。また、血糖値が上がると血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリンが分泌される。インスリンは中性脂肪の分解を妨げ、血糖を体脂肪に変えて体重を増やす「肥満ホルモン」であり、高インスリン状態は動脈硬化を招く。

 この病気で本当に怖いのは合併症だ。血糖値の乱高下で血管が老化し、細い血管が傷つくと「三大合併症」と呼ばれる網膜症、腎症、神経障害となり、太い血管が損傷すると脳梗塞や心筋梗塞に至る。

 元凶である血糖値の上昇を招く唯一の原因は、糖質(炭水化物)の摂取だ。かつて米国糖尿病学会は3大栄養素(糖質、たんぱく質、脂質)のうち「たんぱく質や脂質も血糖に変わる」としていたが、研究が進み「糖質のみが血糖値を上げる」と2004年に見解を改めた。これが他の先進国も認める「国際基準」だ。

 唯一、血糖値を上げる糖質を制限すれば、血糖値上昇を抑えられる私の提唱する糖質制限食はこのシンプルな事実に基づく。

 ところが日本糖尿病学会はこの事実を隠し、2013年11月に発行の『糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版』で「血糖値に影響を及ぼす栄養素は主として炭水化物だが、脂質とたんぱく質も影響を及ぼす」などと記載した。科学的根拠がなく、世界的な潮流とは真逆の非常識な見解だ。

 学会は現在も糖尿病治療として「炭水化物50~60%、たんぱく質20%以下、脂質の摂取上限25%」、「女性1日1200~1400kcal」、「男性1日1600~1800kcal」のカロリー制限食を推奨する。脂質とたんぱく質を控えれば、血糖値が上がる炭水化物を多く摂取しても構わないというのだ。

 論理矛盾も甚だしいが、この弊害は明らかだ。2型糖尿病患者が60%の糖質を摂取すると食後の血糖値は必ず200mg/dlを超える。血糖値が180mg/dlを超えると動脈硬化や合併症のリスクが高まることは、世界の医学界でエビデンス(科学的な根拠)として認められている。

 デタラメな治療の結果、年間1万6000人以上が糖尿病腎症から透析を受け、その医療費は年間800億円に及ぶ。さらに、年間3000人以上が糖尿病網膜症で失明し、同じく年間3000人以上が糖尿病足病変で足を切断している。これだけの患者数が物語るのは学会が主導する糖尿病治療の不首尾に他ならない。

※SAPIO2014年11月号

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン