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2014.11.02 16:00  週刊ポスト

中村嘉葎雄 兄・萬屋錦之助と似ぬよう汚れ役を選んでいった

「歌舞伎座で萬屋が公演する時は私も必ず一本出なくちゃいけないんですよ。だからわざと映画やテレビの仕事を入れたりしていました。それで母親に『来月は出られない』と言うと、『しょうがないわね。映画の方を大事にしなさい』と納得してもらって。助かりました。

 萬屋は『錦之助』時代の方が良かった。『萬屋』になってからは筋無力症という重病を負いましたから。それでも、そこから立ち直った精神力は凄かった。同じ病気の人の励みになったんじゃないですか。ただ、そういうのがあるもので力が入って、芝居が大きくなってしまった。彼は責任感の強い人だから」

 1981年の映画『仕掛人梅安』は、兄弟が共演した作品だ。池波正太郎原作の本作で錦之介は、表で鍼医者、裏では殺し屋という主人公を、嘉葎雄はその相棒を演じている。

「『梅安』の時は萬屋は自分で『俺にはできない』って言っていました。『俺の《域》じゃない』と。『俺はダメだけど、お前にはピッタリだ』とも言っていましたよ。梅安が食事する場面があるんですけど、萬屋は品がいいんですよ。折り目正しい。でも、梅安ってそうじゃないんですよね。もっとグチャグチャと食べないといけない。

 萬屋が偉いのは、ファンを裏切らないところです。彼のような大スターはイメージが変わったらいけないんですよ。私にはそれができない。すぐ裏切っちゃうんですよ。そう思ってなくても、自然とそうしてしまう」

●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(文芸春秋刊)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮新書)ほか。最新刊『時代劇ベスト100』(光文社新書)も発売中。

※週刊ポスト2014年11月7日号

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