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マンションが抱える長期修繕問題 後から高額な請求が来る例も

 マンションの老朽化に直面している人が増えている。マンション居住者で構成する管理組合向けのコンサルティングなどを手がけるさくら事務所のマンション管理コンサルタント・土屋輝之さんが話す。

「1960年代に建築ラッシュが始まったマンションは、今では全国に約590万戸。ブームの初期に建てられたものはすでに築50年以上経過しています。一般的に、マンションは12~15年周期を目安に大規模な修繕工事が必要で、概ね建築後40~50年以上経過したマンションでは老朽化により建て替えを検討しているケースもあります。

 しかし、費用面で住民負担が大きい場合は頓挫するケースが多く、これまでに建て替えられた実績は196件にとどまります(2014年4月現在)。大規模修繕工事についても、費用は住民が『積立金』という形で準備しておきますが、実際は費用不足などでさまざまなトラブルが起きているのです」

 国土交通省の『平成25年度マンション総合調査』によると、全国のマンションの89.0%が25~30年スパンで検討した長期修繕計画を作成している。すべてがその計画通りにいけば問題は起きないはずだが、あちこちで想定外の事態が起きている。

 大阪府在住のA子さん(51才)は、20年前に約4000万円で新築マンションを購入した。決め手となったのは、立体駐車場の使用料が無料だったことだ。

「最近になって、マンションの外壁や水道管などの修繕工事費用が足りないということで、居住者全員が一時金として50万円も負担させられることになったんです」(A子さん)

 毎月積立金を支払っているにもかかわらず、突然襲ってきた多額の出費。納得のいかないB美さんは管理組合に問い合わせた。原因は無料の立体駐車場にあった。

「説明によると、機械式の立体駐車場には必ずメンテナンスが必要で、利用者は駐車する自動車1台あたり毎月4000円のメンテナンス料を支払わなければならなかったそうなんです。しかし、当時新築マンションを売るために駐車場の使用料を無料にしてしまったことで、メンテナンス料を徴収することができなくなった。やむを得ずメンテナンスには積立金の一部を充てていたため、肝心の修繕用の費用が足りなくなったというのです」(A子さん)

 前出の土屋さんによれば、A子さんのようなケースはよくあるという。

「慢性的な財源不足に陥っているマンションはかなり多く見られます。デベロッパーの中には、売り出し時にローンと管理費、積立金などを合計した『月々の支払い額』を低く見せて売りやすくするため、積立金を低めに設定する傾向や駐車場の使用料を無料、もしくは明らかに低額にするケースがあります。

 しかし、当初は月々の駐車場の使用料を無料としていたマンションでも、後々になってお金が足りなくなって有料化するケースがあります。はじめに設定しておいた支払い計画が大幅に変更になった結果、長期間にわたり管理費や積立金の支払いが滞り、何百万円という“負債”を抱えてしまう人もいるほどです。その場合、管理組合は裁判所に申し立てをして滞納者の住戸を強制的に競売にかけることができ、もとの住民は強制退去という形になります」

※女性セブン2014年12月4日号

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