国際情報

日本人の感覚で中国人のメンタリティを理解する考えは改めよ

 尖閣をはじめとする周辺国との領土問題、少数民族への苛烈な弾圧世界第2位の経済大国とは思えない中国のふるまいは、果たしてどこから来るのか。他人の物まで奪い取る、その拡大志向に潜む思想を、京都府立大学准教授の岡本隆司氏が読み解く。

 * * *
 習近平国家主席の唱える「中華民族の復興」は、清代の「中華帝国」を理想としている。中国が中心だった「前近代」の世界秩序を東アジアで復活させるという意思表示であり、近年の旺盛な海洋進出はその表れである。

 日本も例外ではない。この秩序に見合う盟主の座を求める中国は日本に対し、尖閣諸島の領有を宣言し、さらに沖縄の帰属を「未解決」と主張する論文まで発表された。かつて中国に朝貢した琉球は「属国」であるという中華思想に基づく領土認識だ。

 経済大国でありながら中国は今も国民国家を形成する途上にある。13億の人民を束ねるため、共産党政権は領土問題や歴史認識で、「反日」を軸にして愛国心・自尊心を植えつけた。

 だが今や、その自尊心は政府のコントロールすら利かないほど燃え上がり、政府は領土問題で一歩も譲歩できない。11月の日中首脳会談で安倍首相と握手をした習近平の強ばった顔は人民からの強烈な圧力の賜物である。

 上下の関係がDNAに組み込まれた中国では、内外ともに「法の下の平等」は、簡単には成り立たない。そんな国が膨大な国土と人口をかかえて、本当に近代的な国民国家となれるのか。先祖返りを続ける中国のリスクは、当面なくなりそうもない。

 距離が近く、風貌が似ていて漢字を使うため、中国人のメンタリティを日本人の感覚で理解できるという考えは改めるべきだ。日本とはまるで異なる中国の言説や行動のパターンを、思想をベースにとらえ、万全の対策を講じる必要がある。

※SAPIO2015年1月号

関連キーワード

トピックス

安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ブラジルにある大学の法学部に通うアナ・パウラ・ヴェローゾ・フェルナンデス(Xより)
《ブラジルが震撼した女子大生シリアルキラー》サンドイッチ、コーヒー、ケーキ、煮込み料理、ミルクシェーク…5か月で4人を毒殺した狡猾な手口、殺人依頼の隠語は“卒業論文”
NEWSポストセブン
9月6日に成年式を迎え、成年皇族としての公務を本格的に開始した秋篠宮家の長男・悠仁さま(時事通信フォト)
スマッシュ「球速200キロ超え」も!? 悠仁さまと同じバドミントンサークルの学生が「球が速くなっていて驚いた」と証言
週刊ポスト
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン