「畜産物」という言い方もされるが、世界に届けようとしているのは牛という生き物だ。高度成長期の自動車のように、急激に右肩上がりの生産計画を描くというわけにはいかない。海外では、和牛のフラッグシップである「A5」よりも「A3」などサシの少ない肉が好まれる傾向があり、リブロースやサーロイン、ヒレなど需要がある部位と、そうでない部位の人気の差も大きい。
数十億円という金額は、輸出産業としてまだ大きくない。今後、輸出認定工場数や輸出向け生産者数、さまざま部位の販売体制の拡大も必要だし、冷凍での輸出の仕組みづくりも求められる。だが、BSEや口蹄疫、原発事故などのマイナス要因が少しずつ払拭されている。
黒毛和牛の肉質は、他の牛とは明らかに異なる。これほど肉汁にあふれた肉は世界を見渡してもそうはない。長期間かけて育まれたオリジナリティにはニーズがある。