言われてみれば、表現者であることを少しずつ知ってもらうこと、表現者としての成長を見てもらうことをビジネスに結びつけている世界がある。戦国時代と呼ばれている、アイドルの世界だ。
AKBグループは、握手会や総選挙などファンとの交流をポイント制のようにして人気のバロメーターとして示し、そこでのコミュニケーション能力が向上する様子を公開している。アイドル同士の葛藤もふくめ、バックステージの様子をドキュメンタリーとして公開している。ももいろクローバーZは、少し無理かもと思われるプロジェクトを課せられ、それを懸命にファンとともに克服していくことをエンターテインメントに昇華している。
アイドルになりたいと志願してやってきた女の子たちは、最初から表現者であるわけではない。最初は、人前で満足に話をすることもできない。だが、稚拙だが人の心に残る立ち居振る舞いをする者が存在し、ステージやイベントを重ねるごとに、思いを伝える術が向上していく。その成長ぶりも含めて、ファンには楽しんでいる。
いま、アイドルとそのファンの間で交わされている娯楽は、かつてはプロレスにも存在していると認められていたものだ。最近、復活していると言われるプロレス会場に集う人たちは、その娯楽を発見した新しい世代だ。彼らは、20年前まで存在していた大衆的娯楽としてのプロレスの存在を知らない。
「きっかけは、もともとファンのEXILEメンバーがプロレスの話をしていたこと。気になってネットで映像を探したら面白そうだったので見に行ってみました。そのあと友だちも誘って行くようになり、二人でハマってます。コンサートよりライブ、生ものの感じが強くてわくわくするんです。何が起こるか分からない楽しさがやみつきです。イケメンも多いし、知ればファンになる人、多いと思うなあ」(20代の女性会社員)
実際に、プロレスが復活していると評判だ。新日本プロレスは売上倍増と報じられ、子ども向けおもちゃや若者向けファッションブランド等のCMに出演するなど、プロレスファンではない人の目に触れやすくなった。新日本プロレスより小規模だが、DDTプロレスやドラゴンゲートでは若い女性の黄色い声援が飛んでいる。
オカダ・カズチカや棚橋弘至、飯伏幸太にHARASHIMA、B×BハルクやYAMATOが広く「発見」されるのも、遠いことではなさそうだ。