■時間が経つほど復興は遅れる
東日本では、融通の利かない行政も復興の足かせになった。例えば陸前高田市の復興事業を妨げたのが、仮換地指定をめぐる問題だった。兵庫県震災復興研究センター事務局長で阪南大学講師の出口俊一氏の話。
「仮換地指定は、区画整理などをする前に土地の持ち主の許諾を得ることです。陸前高田市はこの仮換地指定とかさ上げ工事を同時に進めようとしましたが、国交省が『仮換地指定が完全に終わるまで着工はできない』と待ったをかけた。でも、その土地の権利者は約2200人で、津波で行方不明の人もたくさんいた。全員に許可を得るのは事実上不可能です。それでも杓子定規に国交省が『ダメだ』というので、事業はストップしてしまった」
ところが1年ほど前に議員立法の動きが出始めると、国交省は手のひらを返して「必ずしも権利者の承諾がなくてもいい」と言い出したのだから呆れるばかりだ。前出・渡辺氏は、復興は遅れれば遅れるほど、さらなる遅れを招くと指摘する。
「宮古市田老地区では、防災集団移転措置法を使って移転する計画を立てていました。しかしこの法律は被災したエリアにしか適用されない。田老地区全体を高台に上げないと意味がないので、地区全体を災害特区にしようと考えたのです。ところが長い間議論しているうちに、特区計画そのものが立ち消えになってしまった。被災直後は住民たちの意識も高いが、時間が経てば経つほど熱が冷めてしまう。復興は遅れれば遅れるほど鈍化するんです」
復興の遅れが復興への諦めを生み、やがて人の絶えた海に防潮堤だけがそびえる──そんな事態に陥らないうちに、阪神大震災の教訓を活かして東北の復興速度を上げなければならない。
※週刊ポスト2015年1月30日号