■三度手間を生んだ復興庁

 復興スピードの差には、当時の政府の対応の差が大きく影響した。前出・塩崎氏が真っ先に指摘するのは、東日本の「初動の遅れ」だ。

「復興にかかわる事業が本格的に動き始めたのは11月頃からで、その時点ですでに8か月も遅れている。民主党政権が復興財源を増税で賄うことにこだわって方針決定が遅れたうえ、増税には法律を作る必要があるため、ますます時間がかかってしまったからです」

 11か月後の2012年2月には内閣総理大臣をトップとする復興庁が設置されたが、皮肉にもこれが復興の足をさらに引っ張った。

「復興庁の設置によって、案件をワンストップで処理できると期待されました。ところが実際には、自治体が上げてきた復興計画を受け取って各省庁に振り分けるだけの調整機関になってしまった」(塩崎氏)

 そのバカバカしさを、渡辺実・まちづくり計画研究所所長がこう語る。

「市町村が復興計画を被災地から遠く離れた県庁まで持っていって、県のスタッフが吟味し、復興庁の各県支部に持っていく。それから復興庁の本庁にお伺いをかけて、本庁が各省庁に仕事を割り振る。これでは二度手間、三度手間です」

 阪神の時とはどう違うのか。市民ボランティア団体『がんばろう!!神戸』元代表の堀内正美氏がいう。

「阪神大震災では、当時の貝原俊民兵庫県知事が復興庁を作らないように国とかけ合った。その結果、復興資金はスムーズに下りてきて、地元に街づくりを任せることができた。私たちのような市民団体も街づくりのための会議のテーブルについて知恵を出し合うことができたのです。東北の不幸は復興庁ができてしまったことですね」

 東日本の復興予算は2015年度までに総額25兆円を超える。問題はその使われ方だ。本誌スクープで明らかになったように、沖縄県の国道工事に5億円、シーシェパード対策を含む捕鯨関係費用に23億円など、2兆円近くの予算が復興とは無縁の事業に流用された。そして被災地では、道路も水道もない荒野で巨大な防潮堤だけが急ピッチで造られる異様さである。

 デタラメがまかり通った原因は、2011年6月20日に成立した東日本大震災復興基本法にある。復興資金、特区制度、復興庁の設置などを定めたこの法律の目的は「東日本大震災からの復興の円滑かつ迅速な推進と活力ある日本の再生を図る」こととされている。つまり「活力ある日本の再生」を理由に、役人が復興以外にも予算をつぎこむ“法的根拠”となった。

「当初の法案にこの文言はなかったのですが、当時のねじれ国会で野党との修正協議を重ねるうちにこうなってしまった」(塩崎氏)

 つまりは与野党談合で政治利権が何倍にも膨れ上がったというわけだ。まさに“人災”というしかない。

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