日本人にだって「お爺ちゃん、お婆ちゃんが好き」「お金儲けだけじゃない、手ごたえのある仕事がしたい」などの動機で、介護職を進路の選択肢に入れる若者はけっこういる。あるいは、他業種から介護の世界に転身を図ろうという社会人が少なくない。
でも、それぞれの期待を胸にその世界に飛びこんだはいいが、「先が見えなくて」辞めてしまう人がとても多い。手取り15万円前後も介護職1年目ならば修業ということで我慢できるが、ほとんどの事業所は「昇給なし」か、あっても微々たる額なのだ。「ボーナスなし」も基本、出て1年に給与1カ月分がせいぜいの世界。「これじゃ結婚、子育てがムリ」となってしまう。
介護の質の低さがしばしば批判されるが、下手すりゃ、介護相手の年金受給額のほうが自分の給与額より上、という待遇で介護職員は働いているのである。せめて「介護職同士の共働き夫婦で家族が作れる」ぐらいの給与水準に持っていかなければ、質について何を問おうが無理筋というものだろう。
これはもう我が国にとって喫緊の課題に他ならない、政官財一体となって介護職の待遇向上を図れ、と筆者は思うのだが、国はさっそく外国人頼りだ。けれども、前述したように、この国の給与はもう世界の憧れ水準ではないし、ましてやダントツ低い介護職の待遇なのだ。
小学生レベルの日本語能力だって、身につけられる外国人は相応のポテンシャルとやる気を有する人材である。「外国人技能実習制度」で門戸を開いても、そんな人材はたいして集まらない、あるいは来日してすぐに現実が見えて続々帰国、となる可能性が高い。
介護は年寄り世代だけの問題では決してない。肉親が要介護になれば、その子供世代は当然のこと、孫世代も、介護のプロの力を借りながら爺ちゃん婆ちゃんの面倒をみることになる。自分自身だって、いつかきっと要介護になる。介護のプロの世話を必要とする。
自分が世話になる人は報われなくてはならない。そういう発想で、介護の世界を崩壊させない責務が我々にはあると思う。