芸能

陰陽師・安倍清明像 本人と子孫による脚色と自己宣伝の結果

 テレビで時代劇を見かけることはすっかり久しくなったが、映画館ではしばしば時代劇映画が上映されている。その中には大ヒットシリーズとなったものもあり、夢枕獏原作の『陰陽師』もそのひとつ。メディアミックスした陰陽師ブームで安倍清明も人気者となった。『時代考証学ことはじめ』などの著書がある編集プロダクション三猿舎代表・安田清人氏が、大人気の陰陽師の実像について解説する。

 * * *
 近年、地上波のテレビ時代劇が退潮する一方、劇場公開される時代劇映画にはヒット作も少なくない。しかし、そのほとんどは巨費を投じて制作される大作映画で、しかも単発の作品だ。『新吾(しんご)十番勝負シリーズ』『忍びの者シリーズ』が制作された日本映画全盛時代のようなシリーズ化はもちろん、続編が作られることもまれだ。

 例外は「ハイパー時代劇」の一つともいわれる『陰陽師(おんみょうじ)』。2001年に東宝で第1作が公開されたのち、2003年には続編の『陰陽師II』が公開された。

 劇場版『陰陽師』は、野村萬斎演じる平安時代の陰陽師安倍晴明(あべのせいめい)が、都に起きるさまざまな超常現象、異変に出会い、その元凶である魔物と陰陽道の秘術を駆使して戦い、事件を解決するという物語だ。能楽師野村萬斎の浮世(現代)離れした雰囲気が、魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)する平安王朝の怪しげな雰囲気とマッチして、特に女性の熱狂的な人気を集めた。

 ところで、野暮を承知で触れてみたいのが安倍晴明の実像。人気小説やコミック、そして映画のヒットのおかげで、安倍晴明はすっかり陰陽道の達人、平安朝の「スーパーマン」として認識されるようになった。

 そもそも陰陽道とは中国の道教の影響を受けて日本で発達した独自の宗教体系で、簡単に言えば、占い、暦(天気予報)、祭り、まじない(病気治療)といったマジカルな技術のこと。しかし、晴明が「陰陽ノ達者」と賞されるようになるのは、実は60歳をとうに過ぎた晩年だ。のちに伝説の陰陽師として語られるようになるのは、晴明本人とその子孫たちによる脚色、自己宣伝の結果だ。

 つまりは、物語化された晴明像はすべて誤りということになるのだが、頭に白いものが交じり腰の曲がった晴明では、「晴明ブーム」など、幻に終わっただろう。

※週刊ポスト2015年2月20日号

関連記事

トピックス

TOKIOの国分太一
《日テレで緊急会見の意味は》TOKIO国分太一がコンプラ違反で活動休止へ 「番組降板」「副社長自らスキャンダル」の衝撃
NEWSポストセブン
悠仁さまの大学進学で複雑な心境の紀子さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、今年秋の園遊会に“最速デビュー”の可能性 紀子さまの「露出を増やしたい」との思いも影響か
女性セブン
TOKIOの国分太一
「テレビ局内でのトラブルが原因ではないか」TOKIO国分太一が重大なコンプライアンス違反で『鉄腕DASH』降板へ…ざわつく業界関係者ら
NEWSポストセブン
グラビアのオファーも多いと言われる中川安奈アナ(本人のインスタグラムより)
《SNSで“インナーちらり笑”》元NHK中川安奈アナが森香澄の強力ライバルに あざとキャラと確かなアナウンス技術で「ポテンシャルは森香澄以上」との指摘
週刊ポスト
不倫が報じられた錦織圭、妻の観月あこ(Instagramより)
《錦織圭・モデル女性と不倫疑惑報道》反対を押し切って結婚した妻・観月あことの“最近の関係” 錦織は「産んでくれたお母さんに優しく接することを心がけましょう」発言も
NEWSポストセブン
殺人容疑にかけられている齋藤純容疑者。新たにわかった”猟奇的”犯行動機とは──(写真右:時事通信フォト)
〈何となくみんなに会うのが嫌だった〉頭蓋骨殺人・齋藤純容疑者の知られざる素顔と“おじいちゃんっ子だった”容疑者の祖父へ直撃取材「ああ、そのことですか……」
NEWSポストセブン
お疲れのご様子の雅子さま(2025年、沖縄県那覇市。撮影/JMPA) 
雅子さまにささやかれる体調不安、沖縄訪問時にもお疲れの様子 愛子さまが“異変”を察知し、とっさに助け舟を出される場面も
女性セブン
不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《美女モデルと不倫》妻・観月あこに「ブラックカード」を渡していた錦織圭が見せた“倹約不倫デート”「3000円のユニクロスウェットを着て駅前チェーン喫茶店で逢瀬」
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《永野芽郁に新展開》二人三脚の“イケメンマネージャー”が不倫疑惑騒動のなかで退所していた…ショックの永野は「海外でリフレッシュ」も“犯人探し”に着手
NEWSポストセブン
“親友”との断絶が報じられた浅田真央(2019年)
《村上佳菜子と“断絶”報道》「親友といえど“損切り”した」と関係者…浅田真央がアイスショー『BEYOND』にかけた“熱い思い”と“過酷な舞台裏”
NEWSポストセブン
不倫が報じられた錦織圭、妻の元モデル・観月あこ(時事通信フォト/Instagramより)
《結婚写真を残しながら》錦織圭の不倫報道、猛反対された元モデル妻「観月あこ」との“苦難の6年交際”
NEWSポストセブン
2人の間にはあるトラブルが起きていた
《浅田真央と村上佳菜子が断絶状態か》「ここまで色んな事があった」「人の悪口なんて絶対言わない」恒例の“誕生日ツーショット”が消えた日…インスタに残された意味深投稿
NEWSポストセブン