おまかせ消費が広がる背景について、船井総合研究所の上席コンサルタント、岩崎剛幸氏に聞いた。
「数年前からキュレーターという言葉が広がったように、“目利き”に選んでもらいたいという消費者のニーズは高まっています。その背景の一つには、消費者が選ぶのが難しくなっていることがあります。インターネット上をはじめ情報はどんどん増えていますし、今は価値観が多様化して正解のない時代。ブランド品ならいい、というわけではありません。だから専門家に選んでもらえると安心なのです。
一方で、自分のこだわりを突き詰めた人の中からも、こうしたニーズは出てくるんです。より良いものを求めて、プロにおススメしてもらいたいと考える消費者もいるんですね」
続けて岩崎氏は、定額制などのまとまった消費である点がポイントだとも語る。
「定額制のよさは、消費者の側からすれば、自分の欲しいもの・好きなものが選ばれていると同時に、予想もしなかったものに出会えることです。自分の視野に入っていなかった商品を、専門家は教えてくれる。単品だと好きなものだけ欲しくなりがちですが、まとまって買う際には、意外なものが少しくらい含まれているのがいいんです。想定内のものに加えて想定外のものに出会えたときに、人の満足度はぐっと上がるんですね。
一方、サービスの提供側からすれば、固定客を確保できるとともに、顧客単価を上げられます。もちろん、お客様のニーズを満たすためには、専門家(キュレーター)としての力量が問われるようになります。力のある専門家なら、新しい市場を生み出していけるでしょう」
おまかせ消費は今後も広がると岩崎氏は見ている。「特に親和性が高いのは、趣味性が強い分野。食やお酒もそうですし、CDなど音楽とも相性がいいと思います。様々な分野でこれから広がっていくと考えられます」
一見、受動的な印象を受けるが、必ずしもそうではない“おまかせ消費”。ものが売れないこの時代に、新たな市場を開拓しそうだ。