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放置した家を更地にすると税率が戻る どう対処すればよいか

 近年、空き家問題が急速に社会問題化しているが、放置した家を更地にすると固定資産税の税率が変わってしまう。空き家を更地にしたいものの、経済的に余裕がない場合、どう対処すればよいか? 弁護士の竹下正己氏が、こうした相談に対し回答する。

【相談】
 両親が住んでいた築50年の家を相続。家をそのままにしておけば、固定資産税が少額ですむので放置していたところ、行政から倒壊の恐れがあるため、更地にするようにと指示がありました。しかし、更地にすると税金の税率が戻り、支払う余裕はありません。この場合、どのような処置を取ればよいですか。

【回答】
 地方税法は「専ら人の居住の用に供する家屋」の敷地に対する固定資産税の課税標準額を本来の額の3分の1の額としています。

 さらに、そのうち200平方メートル以下の範囲や200平方メートル以上でも住宅戸数で割った面積が200平方メートル以下の部分は、本来の課税標準額の6分の1の価格にしています。税額もその割合で減額します。

 都市計画がある市町村で課税される都市計画税(固定資産税と総称して「公租公課」)も、この区分に応じ3分の2、または3分の1に減額されます。この特例は、かつて地価の高騰にともない公租公課の額が高額化したことから導入された制度です。空家でも人の住居の用に供する建物であれば、この適用があります。

 少子化や過疎化で増える空き家が放置され、防災、衛生等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしています。その原因の一つが建物を取り壊すと住宅用地課税の特例の適用がなくなることです。

 昨年11月に、地域住民の生命・身体・財産の保護、生活環境の保全、空家等の活用のための対策を目的に、空家対策法が成立しました。この法律では、放置すると危険な建物を特定空家とし、市町村長が所有者に除却を命じ、応じなければ代執行できます。

 そして、与党の平成27年度税制改正大綱では、特定空家を課税標準の特例対象から除外する方針が示されています。少なくとも、放置すると危険だったり、不衛生な建物だと公租公課の課税特例がなくなる可能性もあります。修理するなどの対策が必要です。費用は賃貸などでカバーするほかありません。不可能であれば、売却するか、公租公課の増額を覚悟してください。

 税金のことを心配しておられますが、朽廃のため大風で倒れたりして、第三者に損害をあたえたときの賠償責任なども考え、判断すべきです。

【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2015年2月27日号

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