芸能

松方弘樹 酒席でモテないと菅原文太に相談された思い出語る

 映画史・テレビドラマ史を研究・執筆テーマにしてきた春日太一氏による名優たちの金言を発掘する『週刊ポスト』連載「役者は言葉で出来ている」をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発刊された。それを記念した俳優・松方弘樹と春日氏との対談から、松方が「文ちゃん」と呼んで慕った菅原文太(享年81)との思い出について語った言葉をお届けする。

 * * *
春日太一(以下、春日):拙著では松方さんの役者人生や演技論について詳しくうかがいましたが、今回はこれまで共演されてきた役者たちの話をお聞きします。まずは先日惜しくもお亡くなりになった菅原文太さんです。松方さんとは『仁義なき戦い』シリーズをはじめ数多くの作品で共演されてきました。

松方弘樹(以下、松方):文ちゃんは僕より9つ上でしたが、めちゃくちゃ近しい関係でしたね。とにかく男気があって、懐の深い素敵な人でした。

 僕は40歳の時に『修羅の群れ』(1984年)という映画に主演したのですが、すでにこの時、文ちゃんは『トラック野郎』シリーズなど大ヒット作ばかりに出ていたトップスター。それなのに、僕のために黙って出演してくれて。

春日:菅原さんは1960年代半ばに松竹から東映に移籍して任映画で頭角を現わしました。その頃、松方さんはすでに東映の若手スターの一人でしたよね。

松方:初めは反発がありました。横から入ってきて、僕がやっていたような役を取っていったわけですから、そりゃ頭に来ますわな。

 僕や伊吹吾郎はその次の次ぐらいの役でね。あの役は本来なら俺の役なのにと思っていました。俳優として、追いついてやろう、追い越してやろうと一番思っていた相手が文ちゃんです。文ちゃんがいてくれたから、僕も頑張れたという部分はあります。

春日:普段の菅原さんはどんな方でしたか?

松方:『トラック野郎』そのままですよ。酒に飲まれるタイプなんです。飲み始めは『木枯し紋次郎』みたい。まぶしそうな顔で飲んでいるからホステスも寄ってくる。ところが、酒が進むうちに段々と『まむしの兄弟』になっていくから、女の子がいなくなる。

 飲んだあくる日、撮影現場で会うと反省しているわけ。「おい、弘樹。どうして俺はモテないんだ」って。「『木枯し紋次郎』の時は凄くモテてたじゃないですか」と言うと「そうか」と答えるんですが、また次に飲みに行っても同じなんです。

【お知らせ】
『役者は一日にしてならず』と『時代劇は死なず!完全版』(春日太一著・河出文庫)の発売を記念して、能村庸一氏(ドラマ『鬼平犯科帳』『剣客商売』などのプロデューサー)と春日氏のトーク&サイン会を開催します。3月11日(水)19時~、紀伊國屋書店新宿本店にて。入場料700円。

※週刊ポスト2015年3月6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
AIの技術で遭遇リスクを可視化する「クマ遭遇AI予測マップ」
AIを活用し遭遇リスクを可視化した「クマ遭遇AI予測マップ」から見えてくるもの 遭遇確率が高いのは「山と川に挟まれた住宅周辺」、“過疎化”も重要なキーワードに
週刊ポスト
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト