朴教授の記述はもっともで、仮に慰安婦問題を「女性の尊厳」の問題だと捉えるのであれば、国籍による違いはないはずだ。ところが、「日本は悪者で、韓国は被害者」という構図にしがみつくから、「(数としては朝鮮人慰安婦の何倍もいた)日本人の慰安婦は辛くなかった」という倒錯した理屈にたどり着く。

 他にも「慰安婦たちには日本帝国の一員としての役割が求められ、それゆえに(兵士との間に)愛が芽生えることもあった」といった部分に削除命令が出た。しかし現実に慰安婦と日本兵が結婚する事例はいくつもあったのだ。

 原告側の反日団体が削除を求め、裁判所が認めた部分を見ていくと、戦時中に日韓が協力し合っていたことを絶対に認めたくないとわかる。

 それがすべての韓国人の意思に基づくものだったとはいえないが、1910年の日韓併合によって日本と韓国は戦時下で一つの国家だった。当然、韓国は日本と戦争していたわけではないし、戦勝国でもない。だが、反日を貫くためにはそれを認めるわけにはいかないのだ。教授は、慰安婦問題を巡る日韓の和解を模索し、こう書いている。

〈慰安婦問題を否定している人々は「慰安」を「売春」としてだけ考え、我々(注・韓国人)は「強姦」としてのみ理解したが、「慰安」とは基本的にその二つの要素をすべて含んだものだった〉(120ページ)

「慰安婦は存在しなかった」という日本にある極論も、韓国の根拠のない主張も等しく批判する良識ある見解と感じられるが、その部分にも削除が命じられる以上、韓国側には和解の意思などないと思わざるを得ない。

※週刊ポスト2015年3月13日号

関連記事

トピックス

近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見えない恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
名物企画ENT座談会を開催(左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏/撮影=山崎力夫)
【江本孟紀氏×中畑清氏×達川光男氏】解説者3人が阿部巨人の課題を指摘「マー君は二軍で当然」「二軍の年俸が10億円」「マルティネスは明らかに練習不足」
週刊ポスト
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン