治療は骨にできたとげを削ることから始める。電気メスを使うと温度が上昇し、組織を傷める可能性があるため、孔から生理食塩水を入れて、水を流しながらの手術となる。さらに、骨に癒着している力瘤を作る腱を慎重に剥がしていく。剥がしすぎると腱が作用しなくなるので、骨との具合を見ながら行なう。
「関節は老化とともに、軟らかいとげができやすいのですが、とげによる傷が治りやすい人と、そうでない人がいます。五十肩が重症化しやすいのは、特に糖尿病の方です。すでに糖尿病を患っている方や、家族に糖尿病患者がいる場合、拘縮肩になりやすい傾向があります」(神戸准教授)
手術は麻酔を含めても1時間半ほどだ。麻酔が覚めて少し痛みは残るが、1泊2日で退院可能だ。退院後は、1~3か月ほどリハビリテーションを行なう。特に、肩甲骨周りの筋肉が細くなっているので、その筋肉を中心にリハビリメニューを実行する。
近年、パソコンによるデスクワークが増えているが、マウスを使うために、腕が前に出ている状態が長く続くと、肩関節の前の部分が狭くなり、肩甲骨にとげができやすいといわれる。仕事の最中に、腕を大きく広げることで、肩関節を動かすことが五十肩の予防の秘訣だ。
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2015年3月27日号