国際情報

L.A.郊外が中国高官の愛人村化 地価は10年前の2倍に上昇

 自分の子どもに米国籍を取らせるため出産を米国でしようという中国の高官や富裕層向けに、米ロサンゼルスには中国人妊婦専用の宿泊施設「月子中心」が増えている。国際ノンフィクション『十三億分の一の男』(小学館)で中国共産党の核心を突く数多の国家機密を綴った朝日新聞記者・峯村健司氏が、「月子中心」と同様に増えている中国高官の「愛人村」について報告する。

 * * *
 月子中心から車を走らせること20分。丘の頂上部分を覆うように建っている薄いクリーム色の豪邸群が見えてきた。こちらも壁や守衛によって厳重にガードされている。先ほどの中国人夫妻に不動産屋経由で見学予約を入れてもらって、一緒にゲートをくぐった。

 敷地内を歩くと、カーテンは閉められたままの飾り気がほとんどない家がいくつかあった。そのうちの1軒の隣家に話を聞くと、

「あの家は、中国大陸から来たアルナイ(愛人)が住んでいるの。外出することはほとんどないけれど、週末には買い物に出かけているみたいね。顔を合わせても挨拶もしないし、なんか不気味な感じがするわ」

 女性は台湾出身の40歳。1997年にこの地に移住してきた。

「私たちがここに来た時と比べて、地価は2倍以上に上がったの。10年前から中国大陸からの移民が増えたからよ」

 不動産価格が上がることは、住民にとって悪いことではない。ただ、近所付き合いをほとんどせず素性がわからない愛人たちとの溝は深そうだ。

 隣のブロックで内装工事をしている家があった。作業中の内装業者に話をきいた。

「この家は、北京から来た役人が150万ドル(1億8000万円)で買ったんだ」

 リビングが20畳近くある、この家も、やはり愛人が一人で住んでいるという。

「女性が一人で暮らすには広すぎるだろう。愛人たちはほとんど英語ができないんだ。外出しても買い物するぐらい。いつ会えるかもわからない主人をひたすら待ち続けているわけだから可哀想な人たちだ」

 愛人村で見かけた女性は20代が中心で、モデルのような美貌を持っていた。北京特派員時代に中国の官僚から聞いた話では、「知人の紹介のほか、高級クラブの女性から愛人を見つける」という。彼女たちは農村出身者が少なくなく、学問とは縁遠い。半ば自由を奪われた状態で、言葉も通じない米国で暮らすことは幸せなのだろうか。

※SAPIO2015年4月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン