3月8日、東京大学の構内に渋谷駅のシンボルとして知られる秋田犬・ハチ公と、飼い主の東大農学部・上野英三郎博士の銅像が完成し、90年ぶりの再会が話題となった。しかし、こういった飼い主と飼い犬の美談がある一方で、動物に対する虐待が事件となることも珍しくない。近所の住人が石で愛犬を虐待した場合、どう対処すれば罪に問えるのか? 弁護士の竹下正己氏が、こうした相談に対し回答する。
【相談】
子供からの報告でわかったのですが、近所に住む中年女性の二人組が、庭で飼っている愛犬に石を投げて虐待しているようなのです。事実、犬は怯え体には傷があり、投げられた石も確認できています。監視カメラを設置する余裕もありませんし、この場合、どういう対処を取れば、彼女らの罪を問えますか。
【回答】
動物愛護法第44条1項では、「愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する」と定められています。
愛護動物には、犬や猫も含まれます。したがって、理由なく石を投げて犬に怪我をさせれば、同法違反の犯罪です。犬は動産ですから、他人の飼い犬を故意に怪我をさせると、「他人の物を損壊」したことになり、刑法の器物損壊の罪にも当たります。
器物損壊罪は、3年以下の懲役か30万円以下の罰金ですが、親告罪といって、告訴手続きを取る必要があります。このように、動物への虐待は犯罪です。物いわぬ犬がかわいそうです。
怪我をしているのであれば、獣医師の治療を受け、診断書を作成してもらいましょう。子供さんからも、どのように女性たちが犬に向かって石を投げたかなど、詳細に目撃状況を確認したうえ、警察に被害届を提出し、相談することをお勧めします。
犯行状況の写真がなくても、こうした方法で犯罪の具体的可能性をある程度説明できれば、警察も調べることになると思います。
やや気になるのは、つなぎ紐(リード)が長すぎるなど、飼い主としての管理が行き届いていなかった場合です。もしかしたら、犬嫌いかもしれない彼女らに怖い思いをさせていなかったでしょうか。
各地方自治体で定めている動物愛護に関する条例では、飼い犬を人の生命、身体又は財産に害を加えないように丈夫な綱、鎖等で逃げ出さないようにしっかりとつなぎ、柵、檻、その他の囲いの中に収容して係留することを義務付けています。ご自分にも落ち度がなかったか、もう一度、犬の飼育環境を確認してください。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2015年3月27日号