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競歩20kmで世界新記録の鈴木雄介 失格ゼロの驚くべき実績

 3月15日の陸上全日本競歩能美大会の20km競歩で、富士通の鈴木雄介選手(27)が1時間16分36秒でゴールし、世界記録を26秒更新した。陸上のオリンピック種目で日本人男子が世界記録をマークするのは、実に50年ぶりの快挙となった。

 鈴木の特長は速さに加えて圧倒的な「反則の少なさ」にある。彼は競歩を始めて13年、失格が「ゼロ」なのだ。競歩は「反則がつきもの」の競技である。「常にどちらかの足が地面に接している」「前足は地面と垂直になるまで膝を伸ばす」ことが義務づけられ、警告3回で失格となる。

 記録や勝負が懸かれば選手たちは警告覚悟で勝負をかける。そのため重要なレースほど大量の失格者が出る。

 2月の全日本選手権(男子20km競歩)では5名が失格となった。トップ選手の参加する大会では1割程度が失格になるというから、鈴木の「ゼロ」がいかに驚くべきことかが分かる。5万メートル競歩の日本記録保持者で、富士通陸上部コーチとして鈴木を指導する今村文男氏がいう。

「鈴木の強みは美しいフォームを維持する持続力。普通の選手は試合後半になって疲れてくると、膝が曲がったりして失格が増えるが、鈴木は後半になってもブレない。それが速さを生み出している。毎日納得するまでフォームのチェックを欠かさなかったことが世界新につながった」

 来年に控えたリオデジャネイロ五輪での金メダル獲得に期待が高まる。15km・20km競歩の元日本記録保持者で、シドニー五輪日本代表の柳澤哲氏がいう。

「金メダル最有力候補です。しかしそれは同時に、審判のマークが厳しくなることを意味します。世界記録保持者だけに、反則のチェックはこれまで以上に厳しくなるでしょう。しかし鈴木の完成されたフォームなら心配ないと思います」

 世界一美しい歩みで、表彰台の中央に日の丸を掲げる日が待ち遠しい。

※週刊ポスト2015年4月3日号

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