芸能

次世代を担う原石女優の注目株 土屋太鳳、松岡茉優、杉咲花

 新たな才能の出現は、ドラマファンにとっても何よりの楽しみだ。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 NHK連続テレビ小説「マッサン」もいよいよ幕を閉じ、来週3月30日から土屋太鳳主演の「まれ」にバトンタッチ。どうにも退屈だった「マッサン」の半年間。単調なエピソードの繰り返し。ずいぶんと長く感じたのは私だけでしょうか。

「国産ウイスキーを生んだ男」というテーマ自体は興味深いものがありました。しかし、最初から「ウイスキーにこだわった主人公が研究を重ねて成功する」と着地点は見えている。そこへ恋話やら失敗談やら、こまごましたエピソードを差し挟んではみるけれどすぐに解決し、また次の話題へと移り深まらない。

 社会との関わりもくっきりとは見えなかった。例えばシベリア抑留の強烈なトラウマすら、本人の中でたちまち解決してしまう。時代を描くのには浅薄すぎた。そして最後は、けなげに尽くしたヒロインがあっけなく病で逝って、涙の大団円。

「鴨居の大将」を演じた堤真一の、強烈な表情ばかりが私の中に残っています。といった辛口意見とは関係なく、視聴率は上々だそうで、制作陣もニコニコでしょう。

 はた、と気付いた。どこまでも予定調和なこの感じ、どこかで見たことがある。良妻賢母、努力は美徳、信じれば成功する、といった凡庸。それは、NHK「朝ドラ」の神髄。

 続く番組「あさイチ」で有働由美子アナが涙を流してみせるのも、何だか昔見たパターン。つまり、従来の「NHK連続テレビ小説」に戻っただけなんだ。

 ここのところ「純と愛」「あまちゃん」「ごちそうさん」と、多少毛色の違うものが続いていただけであって、「マッサン」でまた元サヤに収まったということ。一つだけ新味があったとすれば、ヒロインが「外国人」だったこと。ただし、エリーさんは日本人以上にけなげで夫に尽くし優しく模範的な妻でした。となればなるほど、へそ曲がりとしては次回作に期待したくなる。

 特に、「まれ」で主役を演じる土屋太鳳には注目。演技歴はさほど長くないけれど、2013年放送の「真夜中のパン屋さん」(NHKBS)で、キラリと光る才能を見せていた。

 母に捨てられて、ガラスのような心を持つ女子高生。必死に生きようとする芯の強さ、けなげさと、孤独感と。矛盾を抱えた人物の緊張感が、浮かび上がっていた。

 高校生といえば一番、キラキラと輝いて見える年頃。弾むような明るさと同時に、ふっと横顔をよぎる暗さを、あわせて表現するのはなかなか難しいはず。その演技力に「この若い役者さん、誰?」と驚き、初めて「土屋太鳳」という一風変わった役者名を知ったのでした。まさしく「磨けばさらに輝きそうな原石」。これから半年、その才能を多いに開花して暴れて欲しい。

関連記事

トピックス

橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
フレルスフ大統領夫妻との歓迎式典に出席するため、スフバートル広場に到着された両陛下。民族衣装を着た子供たちから渡された花束を、笑顔で受け取られた(8日)
《戦後80年慰霊の旅》天皇皇后両陛下、7泊8日でモンゴルへ “こんどこそふたりで”…そんな願いが実を結ぶ 歓迎式典では元横綱が揃い踏み
女性セブン
犯行の理由は「〈あいつウザい〉などのメッセージに腹を立てたから」だという
「凛みたいな女はいない。可愛くて仕方ないんだ…」事件3週間前に“両手ナイフ男”が吐露した被害者・伊藤凛さん(26)への“異常な執着心”《ガールズバー店員2人刺殺》
NEWSポストセブン