半世紀以上も続いたTBSラジオ『全国こども電話相談室』(2008年に『全国こども電話相談室・リアル!』にリニューアル)が3月29日の放送で終了した。
子供たちから寄せられる素朴な疑問や質問は、時代を映す鏡でもあったが、それでも時代とともに番組は変わらざるを得なかった。前述の通り、2008年に番組はリニューアル。メールやはがきで事前に質問を受け付け、電話でのやりとりを収録する方式になった。
リニューアル時から最終回までパーソナリティを務めたラジオDJの山本シュウ氏は、レモンの被り物をした「レモンさん」に扮し、中学生男女4人の「リアル相談員」とともに返答を一緒になって考えた。
「ネットが普及して、科学的な質問などは自分で調べられるようになりました。その一方で、いじめや親子関係の悪化などが深刻になり、『いじめられているのに学校も親もわかってくれない』、『両親がケンカばかりでつらい』など、ネットで解決できない悩みが増えました。そこで番組を刷新し、より人間関係の相談に答えるようになりました」(山本氏)
子供たちへの返答もかつてのように「答え」を噛み砕いて教え諭すことより、話をじっくり聞いて「出口」を模索するスタイルとなった。
例えば、「いじめられてつらい、死にたい」という相談のケース。
「まずは『死にたい』というのを、『落ち着いて』となだめ、何があったか全部、話をさせてから、『それはこういうことだよね』と言い分を確認する。
その後、『辛かったね。よくここまで耐えたね』と子供の気持ちに寄り添う。そのうえで、『何も死ななくても、他にできることがあるよね』と解決策を一緒に考えていく。
答えを与えるのではなく、自分で考えて生きていける力を少しでも身につけてもらうのが重要です。そのサポートをするのが僕らの役割でした」(山本氏)
番組の終了で、そうした貴重な場が一つなくなってしまう。
TBSラジオは番組終了の理由について、「現代の小中学生は電話で相談するよりもパソコンやスマートフォンで調べることに慣れている。いったん看板を下ろし、親子で聞ける番組を模索することにしました」と説明する。山本氏も志半ばの様子だ。
「今はネットやSNSなどのコミュニケーションツールが発達する一方、地域社会の連帯が失われて、大人も子供も“人に相談する”という習慣が薄れています。相談に乗ってくれる“お節介な人”も少なくなった。番組には感謝していますが、子供たちのSOSを拾う場がなくなるのは残念です」
※週刊ポスト2015年4月10日号