小川氏は昨年末、経済誌のインタビューでこんなことを答えている。
〈創業の頃は私も年間4700時間働いた。それから4000時間、3500時間と減らしてここ数年は3000時間以内だ。(中略)われわれの父親の世代は戦後復興で皆長い時間一生懸命頑張ってこの国の礎を作ってきた。働くことは尊いという価値観を日本人が失ってはいけない〉(週刊東洋経済/2014年12月6日号)
しかし、労働者の権利や人格を無視した労務管理が許される時代ではない。3月31日の会見では、妻が外出先で避けられている実体験を涙ながらに語りながら、「社会的に尊敬される会社になる」と誓ったという小川氏。
カリスマ社長の改心が本物なら、今後の牛丼戦争にどんな影響を及ぼすのか。
「すき家は人件費や原材料高の影響で、牛丼並盛り291円から350円に値上げしますが、それでも業界の最安値を維持しています。直近の客数の落ち込みは吉野家のほうが大きいですし、デフレ脱却といってもロイヤルが客単価を上げすぎて伸び悩んでいることからも分かるように、やはり外食産業はお客さんが来なければ話になりません。
しばらく苦しい時期が続いたとしても、ゼンショーグループは回転寿司の『はま寿司』やファミレス『ココス』などを抱える外食企業のリーディングカンパニーだけに底力はあります。あとは小川さんが売り上げとコストのバランスを崩しながらも粘り強く人材を確保し、消費者が納得する商品の質を高めていければ反転攻勢させるチャンスはいくらでもあると思います」(前出・中村氏)
すき家に突き付けられた経営課題は、脱デフレを目指す他の外食チェーンにとっても他山の石となるに違いない。