国内

残業代ゼロ法案 40代以上管理職の「賃カツ法」になる場合も

 アベノミクス成長戦略の柱の一つである「柔軟な働き方の実現」のための労働基準法改正案が4月3日に閣議決定された。週40時間を基本とし、超過分には労働時間に応じて賃金が支払われる「労働時間規制」に例外を設けるとする内容だ。いわゆる「残業代ゼロ法案」である。

 これまで大メディアは「金融アナリストやディーラーなど一部職種の年収1075万円以上のサラリーマンが対象」と報じてきたが、法案にそうした文言はない。

 法案は例外が適用される「高度プロフェッショナル制度」の対象となる業務についてこう記す。

〈高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして、厚生労働省令で定める業務〉

 なかなか頭に入ってこない典型的なお役所言葉だが、最後に〈省令で定める〉とあるのがミソだ。法改正が国会での審議と議決が必要なのに対し、「省令」は各省の大臣が制定できる。

 法律には大まかなことだけを書き、大事なことは省令で決めるのが政府・霞が関の常套手段だ。業界との談合も癒着もやり放題の仕組みである。『2016年 残業代がゼロになる』(光文社刊)の著者で、ジャーナリストの溝上憲文氏が解説する。

「法案決定に先立って厚労省の労働政策審議会が報告書をまとめています。そこにはたしかに年収1075万円以上を目安とすると書かれ、対象となる職種も『金融商品の開発業務』『ディーリング業務』などと具体的に例示されています。

 報告書の内容が先に広く報じられたため“一部限定”のイメージが定着しましたが、政府は曖昧な文言の法案で国会審議を乗り切り、省令で対象業務を広げていく目論見なのでしょう」

 さらに溝上氏が続ける。

「大企業ではマネジメントに携わるライン管理職にはなれないが、キャリアを積んで専門性を持つ社員に専門課長といったポストを与えているところが少なくありません。45歳以上で年収1000万円以上の人もいて、残業代を合わせるとライン管理職より高くなることもある。

 経営者としてはこの人たちの残業代をなんとかカットしたいのです。『高度な専門知識がある』という説明もしやすい。1075万円以上の専門課長が対象となる場合、残業代がまるまるカットされて月10万円以上の賃下げになるケースも考えられます」

※週刊ポスト2015年4月24日号

関連キーワード

トピックス

千葉ロッテの新監督に就任したサブロー氏(時事通信フォト)
ロッテ新監督・サブロー氏を支える『1ヶ月1万円生活』で脚光浴びた元アイドル妻の“茶髪美白”の現在
NEWSポストセブン
ロサンゼルスから帰国したKing&Princeの永瀬廉
《寒いのに素足にサンダルで…》キンプリ・永瀬廉、“全身ブラック”姿で羽田空港に降り立ち周囲騒然【紅白出場へ】
NEWSポストセブン
騒動から約2ヶ月が経過
《「もう二度と行かねえ」投稿から2ヶ月》埼玉県の人気ラーメン店が“炎上”…店主が明かした投稿者A氏への“本音”と現在「客足は変わっていません」
NEWSポストセブン
自宅前には花が手向けられていた(本人のインスタグラムより)
「『子どもは旦那さんに任せましょう』と警察から言われたと…」車椅子インフルエンサー・鈴木沙月容疑者の知人が明かした「犯行前日のSOS」とは《親権めぐり0歳児刺殺》
NEWSポストセブン
10月31日、イベントに参加していた小栗旬
深夜の港区に“とんでもないヒゲの山田孝之”が…イベント打ち上げで小栗旬、三浦翔平らに囲まれた意外な「最年少女性」の存在《「赤西軍団」の一部が集結》
NEWSポストセブン
スシローで起きたある配信者の迷惑行為が問題視されている(HP/読者提供)
《全身タトゥー男がガリ直食い》迷惑配信でスシローに警察が出動 運営元は「警察にご相談したことも事実です」
NEWSポストセブン
「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月10日、JMPA)
《初の外国公式訪問を報告》愛子さまの参拝スタイルは美智子さまから“受け継がれた”エレガントなケープデザイン スタンドカラーでシャープな印象に
NEWSポストセブン
モデルで女優のKoki,
《9頭身のラインがクッキリ》Koki,が撮影打ち上げの夜にタイトジーンズで“名残惜しげなハグ”…2027年公開の映画ではラウールと共演
NEWSポストセブン
2025年九州場所
《デヴィ夫人はマス席だったが…》九州場所の向正面に「溜席の着物美人」が姿を見せる 四股名入りの「ジェラートピケ浴衣地ワンピース女性」も登場 チケット不足のなか15日間の観戦をどう続けるかが注目
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
「『あまり外に出られない。ごめんね』と…」”普通の主婦”だった安福久美子容疑者の「26年間の隠伏での変化」、知人は「普段どおりの生活が“透明人間”になる手段だったのか…」《名古屋主婦殺人》
NEWSポストセブン
「第44回全国豊かな海づくり大会」に出席された(2025年11月9日、撮影/JMPA)
《海づくり大会ご出席》皇后雅子さま、毎年恒例の“海”コーデ 今年はエメラルドブルーのセットアップをお召しに 白が爽やかさを演出し、装飾のブレードでメリハリをつける
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《中村橋之助が婚約発表》三田寛子が元乃木坂46・能條愛未に伝えた「安心しなさい」の意味…夫・芝翫の不倫報道でも揺るがなかった“家族としての思い”
NEWSポストセブン