さらに、是が非でも無期契約の社員を増やしたく会社は、法施行のスケージュールの間隙を縫うように、こんな姑息な手段に出ることも考えられる。
「5年ルールの申し込みができるのは、法が施行された2013年4月以降に成立した労働契約からカウントされるため、一番早い人でも2018年4月1日以降となります。
この間に会社が契約更新の上限を5年以内に定めてしまえば、5年ルールの権利が発生する前に雇用関係が切れてしまいます。今後、こうした『雇い止め』の事例が出ないとも限りません」(稲毛さん)
まだ5年ルールの適用者が一人もいないだけにピンと来ない話ではあるが、労働者の雇用を安定させるために導入された制度のはずが、労働環境の悪化に繋がってしまえば改正した意味がなくなる。
そもそも、非正社員の根本的な問題は、賃金の低さにあると稲毛さんは指摘する。
「いま、契約社員の人でも月給23万円、時給にして1500円も貰えれば御の字という方はけっこういますが、それは新入社員レベルです。
いくら契約期間の定めが外れても、昇給も含めて給与体系の引き上げが行われなければ非正規社員の労働条件はいつまでたっても改善されないでしょう」
新しい制度を活用するのはいいが、労働者側も2018年までに自分の理想とする働き方とそれに見合った給料レベルをじっくり見つめ直す必要があるだろう。