国内

「庶民は愚民化切り札のTVにしがみついている」と落合信彦氏

 日本のテレビ報道の劣化が叫ばれているが、「いまのテレビはローマ時代のサーカスと同じで、国家滅亡の前兆である」と厳しく指摘するのは落合信彦氏だ。

 * * *
 私には、いまの日本がかつてのローマ帝国に重なって見えて仕方がない。もちろんローマと日本ではスケールも国力も比べものにならないが、ローマが衰退し、滅んでいった過程は、いまの日本と似ている。

 ローマは帝国の巨大化に伴い、兵士の遠征に莫大なカネがかかるようになった。そのカネは、地方にある属州から税金として徴収するようにした。属州からの税金を高くする一方、カネのないローマ市民に対しては多額の援助、つまり「生活保護」を与えるようになった。

 これにより、誇り高きローマ人は、昼間から酒を飲んで、ケンカをやって、皇帝を罵るような状態まで堕落してしまったのだ。

 これが帝国を脅かす動きにつながることを恐れたローマは、皇帝が国庫から資金を拠出する形で、競技場を作った。後のコロセウムだ。ここで剣闘士同士の殺し合いや剣闘士と猛獣の争いなどを見せる。

 このショーでローマの年間予算の3分の1が費やされた。ローマ市民は血が流れれば流れるほどエキサイトしていった。血を見て喜ぶだけの生活で、ローマ市民はどんどん思考停止に陥り、国家全体がニヒリスティックになっていった。かつては誇り高かったローマ市民が怠慢になってしまったのだ。精神のスラム化であった。

 これが、ローマ帝国崩壊につながっていったひとつの原因、「パンとサーカス」と呼ばれるものだ。パンとは生活援助、サーカスは競技場を指す。これをいまの日本に当てはめると驚くほどマッチする部分がある。

 政府からの援助金バラ撒きに多くの国民や団体が群がり、一方、庶民は愚民化の切り札とも言えるテレビにしがみついて、ストレスを解決する。これに加えて、ローマでは政治家たちのコラプション(腐敗)が増え、さらにリッチ(富裕層)とプア(貧困層)の格差がとんでもないものになっていった。

 一つ日本の国会議員に私が頼みたいのは、古代ローマ史を是非学んでほしい。過去を知らぬ者は未来から突き放される。何も知らないまま、この国は歴史の過ちを繰り返そうとしている。

※SAPIO2015年6月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
『あんぱん』“豪ちゃん”役の細田佳央太(写真提供/NHK)
『あんぱん』“豪ちゃん”役・細田佳央太が明かす河合優実への絶対的な信頼 「蘭子さんには前を向いて自分の幸せを第一にしてほしい。豪もきっとそう思ったはず」
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/五十嵐美弥)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン