マツダがこだわりのクルマづくりを貫けるかは、他社とのアライアンスの出方によっても大きく変わってくるだろう。度重なる経営難やフォードの傘下入りで方向性を見失った苦い教訓もある。
現状、マツダの業績は過去最高益を叩き出すほど絶好調だが、世界販売台数は139万7000台足らず。トヨタの900万台と比べると6分の1にも満たない。世界的に合従連衡の進む自動車業界の中で生き残るためには、他社との協業は重要な選択肢となってくる。
5月13日にトヨタとの提携拡大を大々的に発表したのは、マツダが「儲かる会社」としての地盤固めも無視できないと判断したことの表れなのかもしれない。
「提携内容は明らかになっていないが、トヨタの持つハイブリッドなどの先進技術と、マツダの持つガソリン・ディーゼル技術を互いに補完し合う目的がある。マツダにとっては販売力のあるトヨタ車に技術を提供することで収益力も向上させられる」(前出の経済誌記者)
しかし、提携内容を広げれば広げるほど、「マツダらしさ」が失われていく懸念がある。
「トヨタ向けのOEM車などを増やしていけば、経営体力がつく反面、マツダ車の存在価値は薄れていくかもしれません。資本関係のないまま協業を進めてどこまでマツダにシナジー効果が出るのかは疑問です」(前出・井元氏)
小飼社長はロードスターの発売会見で、次のように語った。
「初代ロードスターのカタログに書かれたメッセージ『だれもが、しあわせになる。』という言葉は、いま思えばロードスターのみならず、マツダブランドの進むべき方向を言い当てていたと強く感じています。これからもお客様との間に特別な絆を持ち、選ばれ続けるオンリーワンブランドになることを目指します」
マツダブランドの矜持を保てるか。その真価が問われるのは、むしろこれからだ。
●撮影/横溝敦