早期と中期の治療法は2つある。1つが光線力学療法だ。広範囲にレーザーを照射すると正常な網膜の細胞にまで影響が及ぶ。そこで事前に特殊な薬剤を注射し、薬剤が新生血管に集積した後で、薬剤にだけに感受性のあるレーザーを照射する。
2つ目が2009年に保険承認された抗VECF薬の注射だ。血管を増殖させるVECFという因子の働きを抑制する物質を注射することで、血管の新生を抑える治療だ。
「眼球の白目から硝子体(しょうしたい)の中に注射します。薬を確実に患部に到達させ、しかも副作用がないというメリットがあります。しかし、注射の効果は2~3か月と短く、効果がなくなる度に注射の必要があります。保険診療で3割負担でも、1回5万円程度の費用がかかり、高額なため、治療を断念される方もいます。心筋梗塞や脳梗塞既往(きおう)の方は治療できません」(島田教授)
加齢黄斑変性症の末期の滲出型も治療法がなく、視力の改善は難しい。昨年からiPS細胞を使った加齢黄斑変性症の臨床研究が始まっている。しかし、1×2ミリのシートを作るのに約3000万円かかるなど、実用化にはまだ遠い。50歳を迎えたら、1年に1度、眼の健診を行なうことが、視力を保つ一番の方法だ。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2015年6月5日号