淡路島を舞台に人の再生を描いた (C)2015 映画『種まく旅人 くにうみの郷』製作委員会


栗山:「この女性だったら(どうるすんだろう)」ということを毎回考えて臨んでいます。栗山千明は違うけど、この女性だったらこうするだろうって。例えば、今放送中の連続ドラマ『アルジャーノンに花束を』(TBS系)では、私は演じる望月遥香という女性をまったく理解できないんですよ。「この子はなんでこんなことを言っちゃうんだろう?」というような台詞が出てくるんです。栗山千明とは全然違う。私にはこんな発想はないわと思います。でも自分にはない所を自分なりに考えて表現していくのがお芝居だと思うので、役に共感できないことが悪いわけではないと思います。

 ただ、この映画に関しては、演じるキャラクターと私自身に無理がありませんでした。今までなかった経験です。

――演じるにあたって篠原監督からのアドバイスなどはありましたか?

栗山:多くのことをおっしゃる監督ではありません。知識として必要な、たとえば映画で鍵となる「かいぼり」(農業用水のための池の水を農閑期の冬場に抜き、堆積したヘドロや土砂を取り除く作業)の説明は細かくしてくださったんですが、役柄上で細かな指導はありませんでした。ある程度自由にさせて頂いたと思います。私は淡路島へ行くのは初めてでしたが、キャラクターも初めてでした。今振り返ると、監督はそんな私の気持ちを大切にしてくださったんじゃないかと思っています。もしかして、このような作品ではなかったら指示があったかもしれませんが。

――ヒロインにとっての転機はどこだったと思いますか?

栗山:どうなんでしょうね。淡路島で農業と漁業の現実を見つめて、自分の無知さにショックを受けたんじゃないでしょうか。彼女には子供のころ、おじいさんの畑で過ごした楽しい思い出や亡くなってすぐに畑が売り飛ばされた悲しみがありました。ところが成長するにつれ、おじいさんの畑や農林水産省を目指した理由など根本的なことを忘れてエリートとして生きてきた。そんな彼女が淡路島に来たら知らないことだらけ。私は何をしていたんだと。きれいな海では魚も住まないことも知らなかった。そういう一つひとつのショックがあって、変わっていったのかなと思いますね。

【栗山千明】
1984年10月10日生まれ。モデルを経て1999年に『死国』で本格的に女優デビュー。2000年『バトル・ロワイアル』、2003年『キル・ビルVol.1』と話題作に出演。2004年『下弦の月〜ラスト・クォーター』で初主演。2007年は映画『エクステ』、連続ドラマ『ハゲタカ』、『特急田中3号』に出演。2010年OVA作品『機動戦士ガンダムUC』の主題歌である『流星のナミダ』で歌手デビュー。2011年主演ドラマ『秘密諜報員エリカ』、『塚原ト伝』、NHK連続テレビ小説『カーネション』の3本が同時期に放映。2012年ドラマ『ATARU』、2013年映画『劇場版SPEC』シリーズ、『図書館戦争』、今年10月には『図書館戦争 THE LAST MISSION』が公開予定。多方面で活躍中。

【映画『種まく旅人 くにうみの郷』】
淡路島を舞台に、人と自然の再生を描いた感動作。アメリカ帰りの農水省官僚の神野恵子は、日本の第一次産業の現状を調べるために淡路島へ向かう。たまねぎ農家の豊原岳志と、海苔の養殖を行う豊島渉の兄弟をはじめ、島の人々と交流するうちに、次第に恵子に変化が…。
監督:篠原哲雄 出演:栗山千明、桐谷健太、三浦貴大、豊原功補ほか。5月30日から全国公開

撮影■浅野剛 メイク■HIROTAKA(LYDIA PRO)  スタイリスト■ume

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