ファッションプロデューサーの植松晃士さんが、オバさんたちが美しく生きるためにアドバイス。今回はとある友人のご近所トラブルにまつわるエピソードを紹介してくれます。
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皆さま、ご機嫌よう! 梅雨入り前のひととき。お健やかにお過ごしですか?
冒頭から何ですが、先日、古くからの女友達から、ちょっと憂鬱な話を伺いました。彼女は東京の高級住宅地、世田谷の一戸建てに住んでいて、お隣とのトラブルに悩まされているとのこと。
きっかけは桜の木。庭の境界近くにお隣の桜の木があって、春はそれは見事な借景を楽しんでいた、ように見受けられました。
ところが、「もう、毎年毎年、お隣から舞い落ちてくる花びらの掃き掃除で大変。桜が終われば、モッコウバラやらジャスミン。気が変になりそう」と、口を尖らせます。
「ですから私、お隣にちょっと嫌みを言ったんですよ」と言うのですが、果たしてどのくらいの「ちょっと」かは定かではありません。
すると先方から、「あら、でも秋にはお宅の柿の木の葉っぱが…」と返され、「それをおっしゃるなら、わが家だってそちらの雨どいから漏れた雨で、雨が降るたび庭が水びたし…」と、嫌みの応酬。
とうとう桜の枝の一部を業者を呼んで切ってもらうところにまで発展したのだそう。
最初は私も、軽く彼女に同情しながら聞いていたのですが、途中で絶句してしまいました。確かに花びらを掃き掃除するのは重労働かもしれません。でも見方を変えれば、春の美しい花を、日頃のお世話もせずに愛でることができるなんて、とてもラッキーなことでしょう?
それなのに何の罪もない桜の枝を切ってしまうなんて、情緒のかけらもないじゃありませんか。
彼女はとても裕福な暮らしをしている美人さんです。周囲から見たら何の不満もなさそうに見えました。でも、こんな話を聞かされると、「幸せそうに見えても、人の心の中まではわからないもの」と思ってしまいます。
もしかしたら彼女は、たまたま美しいものを愛でるための「きれいセンサー」が故障していたのかもしれません。それとも自分でも気づかないうちに、心が荒んでいた?
※女性セブン2015年6月11日号