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東大理III合格3兄弟を育てた母「受験は人生を賭ける経験」

子の勉強を手伝うのは母の「仕事」。理III3兄弟の母・佐藤亮子さん

 名門・灘校(灘中、灘高等学校)から、日本最難関といわれる東京大学理科三類(医学部/通称・理III)に合格した3兄弟の母・佐藤亮子さん。幼児期の育て方から大学受験までのノウハウを公開した著書『「灘→東大理III」の3兄弟を育てた母の秀才の育て方』(角川書店)は、受験という枠を超えて、その独自の教育方針に注目が集まっている。東大理III3兄弟はどのように誕生したのか。子育てがとかく難しいこの時代。3男1女の母としてまい進してきた佐藤さんにお話を伺った。【前後編に分けてお届けします/前編・受験編】

 * * *
【子育てを通して社会貢献を】

――佐藤さんはいつ頃から、お子さんの教育を考えるようになったのですか。

佐藤:私は専業主婦でしたので、子供を通して社会貢献したいという思いがありました。それで、少しでも未来を良くするために大事なのは「政治」と「教育」だと考えたんですね。でも政治に関してできるのは、清き一票を投ずることくらい。一方、教育なら、私にもできることがあるだろうと。

 とはいえ、もともと子供好きだったわけではなくて、長男を産んだときに、子育てってなんて大変なんだろうと、目が回ってしまって(笑)。器用ではありませんから、こんなに手がかかるのなら、自分の趣味などは捨てて、24時間子供の教育に向き合うしかないと覚悟を決めたんです。それで、せっかく子供に向き合うなら、1人じゃ少ないなぁと。可能なら4人くらい産むことで、なにがしかの社会貢献もできるだろうし、子育てって何だろう、人間ってなんだろうと、自分の考えを深めることもできるだろうと思いました。

――ご自身の子供の頃はいかがでしたか。教育熱心な家庭に育たれたのでしょうか。

佐藤:そんなことはなくて、私自身は田舎で、のんびり育ちました。公立の高校に通い、東京で遊びたいなと、東京の大学を受験したんです。で、大学生のときに、アルバイトで小学5年生の女の子の家庭教師をしたんですね。彼女は四谷大塚(塾)にも通っていて、そのテキストを見せてもらったら、ものすごくわかりやすいんです。私が見ても、理科や社会が目が覚めるようにわかる。都会の子って凄いなあと感心しましたし、12歳までの学びは大事なんだなぁとも思いましたね。この経験は大きかったように思います。

【「東大理III模試:C判定」にかけた言葉】

――ご著書を読むと、佐藤さんはお子さんたちの勉強に大きくコミットされています。参考書選びから、国語の教科書の音読、弱点の分析、算数の特性ノート作り、灘の過去問集め……。主婦業をされながら4人の勉強を見るのは、大変だったのではないでしょうか。

佐藤:私は可能な限り、子供と二人三脚をすると決めたんです。「勉強ばかりさせて可哀そう」と言われたこともありますが、子供が行きたい大学に行けない方が可哀そうだと思いました。決めた以上は、しんどいと思いながらやっても楽しくない。だから、子供たちの勉強の手伝いは私の“仕事”だと、意識を切り替えました。仕事だったら、時間は守らないといけないし、簡単に休むことも許されないし、何より、成果を出さないといけませんよね。試行錯誤しながら、本に書いたような「佐藤式勉強法」を確立していきました。仕事とはいえ報酬はないですが……子供の笑顔がありますね(笑)。

――お子さんたちを“理III”に入れたいというお気持ちは、どのくらいありましたか?

佐藤:それはなかったんです。大学名が目標になってしまうとむなしいですよね。ですから、小さい頃はとにかく精一杯育てて、子供の力を最大限に伸ばそうと、それだけでした。意識としては「上」ではなくて「最大限」。学校のテストは常に100点を目指させてきましたね。灘に入ってから、子供たち自身が東大に行きたいと言うようになりましたから、じゃあ、やるんだったら一番難しいところに挑戦してみようよと。お母さんもできる限り手伝うよと。

 息子3人は医学部に入ったわけですが、もしも数学なり哲学なり、他の道に興味が移ることがあれば、そちらに方向転換してもいいと思っています。「18歳まではすべて親の責任」という気持ちで育てていますから(娘がいるのでまだ終わっていませんが)、それ以降は、彼ら自身で人生を切り拓いていってほしいですね。

――受験において、お子さんがくじけそうなときは、どう対応されましたか?

佐藤:例えば次男は、高3の12月に「東大理III模試:C判定」を出したんです。その時初めて、「(理IIIよりは偏差値の低い)理Iにしようかな」と、弱音を吐きました。それを聞いて私は「理Iに変えても、あなたは気を抜くから、落ちるわよ」と。

 次男は、3人の中で一番社交的で、お調子もの。カッコつけなところもあるから(笑)、本音は理IIIに行きたいはずなんですよ。そういう性格を承知してるからこそ、発破をかけたというのもあります。何より親としては、人生を賭けさせたかったんですね。目の色を変えさせたかった。自分が望む結果に対して勝負を賭けることの大切さを教えてくれるのが、受験です。落ちたら落ちたでいいんです。それも人生経験ですから。

 もちろん精神論だけで状況は改善されません。実は次男は、大事な夏休みに遊んでしまったんですね。夏に7キロも太ったので、おかしいなぁと思っていたら案の定(笑)。過ぎたことを言ってもはじまりませんから、夏休みに失った時間を計算して、これから2カ月、一日何時間、何をすべきか、具体的な対策を立てました。センター試験までは、息子が過去25年間の過去問を解き、私が丸付けを担当するなどして、必死に乗り切りました。

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