【理IIIに入っても“ノーサイド”】
――3人とも受験に成功されたわけですが、振り返って、受験に大事なことは何だと思われますか。
佐藤:受験で大事なのは“先行逃げ切り”だと思います。人って怠け者ですから、一気に走るのは、できるかもしれないけど、しんどい。早め、早めにやっておくのが得策です。高校3年間を考えるなら、できる教科から――とくに英語を、早めにやっておくことをお勧めしますね。
ただ誤解のないように言っておきますと、私自身は、英語の早期教育はあまり意味がないと思っています。子供の頃に大事なのは「読み・書き・そろばん(計算)」です。ちなみに灘では、英語より数学ができる子が尊敬されるんです。子供が小さいうちは、国語と算数を鍛えることが賢い脳を作ると思います。
――受験というのは、子供の人生にとってどのくらい重要だと思いますか。
佐藤:例えば三男は、灘中受験のときに、たいへんなプレッシャーを感じていました。上の2人が灘ですから、受かって当然という雰囲気が周りにもあるし、もちろん本人も受かりたいと思っていた。その彼が、後に東大に入ってこう言ったんです。12歳の時は、第一志望の灘に受からないと、その先が真っ暗になるような気がしていたけど、実際に理IIIに入ってみると、色んな学校から来てる。第三志望くらいまではOKやったんやなぁと。
第一志望に受かる方が気持ちはいいんですけど、やっぱり、受かっても受からなくてもノーサイドなんですね。中学に入ったら、そこでノーサイド。大事なのは、また6年間頑張れるかどうか。大学もそう。東大卒の医者がいい医者とは限りませんよね。卒業したらノーサイド。社会に出て、新たに修業を積まなければいけない。
同時に、真にノーサイドと思えるのは、必死にやってきた人だけだとも思います。「やればできる」とか「やればできた」と言う人っていますよね。でも、受験で問われるのは「やれば」ではなく、「やるか、やらないか」。これは、社会に出ても同じなのではないかと思います。ただ、人って、特に子供は怠け者ですから、なかなかやらない。だからこそ、親が子の手助けを精一杯するのは、とても大切だと思っています。
■プロフィール/佐藤亮子(さとう・りょうこ)
奈良県在住。主婦。津田塾大学卒業後、大分県内の私立高校で英語教師として2年間教壇に立つ。その後結婚し、長男、次男、三男、長女の順で3男1女を出産。長男・次男・三男の3兄弟が全員、名門私立の灘中・高等学校に進学。3人それぞれが体育系のクラブに所属し青春を謳歌、ガリ勉とは無縁の学生生活を送る。高校では塾に通いつつも、高3の夏からようやく本格的な受験勉強を始めた。その後、3人とも日本最難関として有名な東京大学理科III類に合格。秀才を育てる子育てノウハウや家庭の教育方針などが注目を集めている。今、最も注目されるお母さんの一人。