ライフ

松谷みよ子氏 晩年は本来の純粋でかわいらしい面強くなった

 1964年に刊行された『モモちゃんとアカネちゃん』シリーズは640万部、1967年の刊行絵本『いない いない ばあ』は1967年以来550万部を超える。570あまりの著作が今なお読み継がれている児童文学作家・松谷みよ子さんは、早くに離婚をして子供を1人で育てながら仕事をしたシングルマザーでもあった。「モモちゃん」のモデルでもある長女・瀬川たくみさんから見た松谷さんはどんな母親だったのだろう。在りし日の思い出を語った。

文/井上理津子(ノンフィクションライター)

〈たくみさんは、12年前から松谷さんの仕事を手伝い始める。3年前には「松谷みよ子民話研究室」から「松谷みよ子事務所」に名称も変え、著作権管理や松谷さんの仕事全般を取り仕切ってきた。〉

 母は、日本の行く末を厳しい目で見つめ、子供の未来を案じていた人でした。

 そういう強い思いの中でたくさんの作品を生み出してきたと思います。とりわけ晩年の母は、のどかな生活を好み、本来の純粋でかわいらしい面が強くなりました。

 この3年間、母は私に頼り切っていました。最後の日々に、父のお墓と並べてほしいと本音を言い、のびやかに過ごして、す~っと眠るように逝ったのは、事務所を率いながら病院と往復する私が倒れるのではないかと案じたかのようでしたし、たまたまスタッフ全員が病室にいた日に逝ったのも、私を一人にしないでくれた母の愛を感じました。

 母が亡くなる前、58年前に母が父と民話の採訪に出かけ、最初に2人で出版した『信濃の民話』の復刊が決定したんです。母はその連絡に、「本当!?」と目を大きくしてとても喜んでいました。母にとって父との最高の思い出が詰まった本ですから。母はきっと、復刊が決まって、父との思い出を辿り、父に会いたくなってしまったのかもしれません。そんなふうにふっと旅立ってしまいました。

※女性セブン2015年6月11日

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン