そもそもシャープの問題はかつてのキャッチコピー「目のつけどころがシャープでしょ」のように自社製品を自画自賛したところで思考停止してしまったことにある。デジタル家電はすぐにコモディティ化(*注)するのに、技術陣が強い会社であるため、わずかな技術アドバンテージにあぐらをかいてしまった。
【*注:コモディティ化/機能、品質、ブランド力などで競合する商品との差別化が困難になり、消費者に価格だけで選択されるようになること】
その象徴が「亀山モデル」だ。三重県亀山市の工場で製造しているだけなのに、あたかも特別なブランドであるかのように宣伝した。
ブランドとは「価格」に反映できる「価値」があるということだ。逆に言えば、そういう「価値」のないワン・オブ・ゼムになったら、ブランドではなく単なる商品コードになるのだ。ところが亀山モデルは、自分たちに特別な「価値」があると錯覚してしまった。
そういう間違いは、往々にして技術者がやりがちだ。つまり、技術的には優れていてもユーザーから見ると差がないのに、それを差別化だと思い込んでしまうという間違いだ。しかし、価格に反映できない(ユーザーから見ればどうでもよい)技術は、差別化とは言わない。
たとえば、すでに液晶テレビは人間の目が認識できる解像度を上回るまでに高性能化しているから大半の人々は、解像度よりも価格で商品を選んでいる。つまり、コモディティ化した領域においては、日本的なコスト積み上げ方式で競争したら、価格を維持できる差別化はできないのだ。
※週刊ポスト2015年6月12日号