国内

故・町村信孝氏 紋切り型でなくその言が楽しみな政治家だった

 自民党最大派閥・清和政策研究会の前会長である町村信孝・前衆院議長(享年70)が6月1日に急逝した。
 
 町村氏は学生運動真っただ中の東大経済学部在学中にノンセクトのリーダーとして全共闘と対立し、「町村殺せ」とまでアナウンスされた武勇伝の持ち主だった。卒業後は通産省を経て1983年に初当選。北海道知事や警視総監を務めた父親の反対を押し切って政界入りした。
 
 政治家としてのキャリアは安倍首相の父、安倍晋太郎・元外相の下で積んだ。1997年に第二次橋本龍太郎改造内閣で文相として初入閣。以後、閣僚を歴任し、2006年に清和研会長に就任し、最大派閥の領袖となった。政治ジャーナリストの野上忠興氏が語る。
 
「理論派の町村さんは政界でも直言居士として知られ、理屈に合わないことには相手が誰であろうと歯に衣着せぬ言い方をしてきた。おべんちゃらが嫌いで、安倍首相にも容赦はしない硬骨漢だった」
 
 そんな性格ゆえにトラブルを起こすこともあった。2008年、官房長官時代に母校の東大での講演で、「早くいい相手を見つけて結婚して、次の世代を作る。これは皆さん方の義務だと思う」「私はちゃんと義務を果たして2人の子供を作った」と語り、当時社民党議員だった辻元清美氏から、「子供を産まないカップルは義務を果たしていないのか」と追及されたこともあった。
 
 ただし、外を向いて声を荒らげるだけの最近の軽薄政治家とは違った。
 
 2013年末、安倍首相の靖国参拝を米国が批判したことに衛藤晟一・首相補佐官が「米国には失望した」と発言すると、町村氏は「自民党全体がたるんでいる、傲慢になっているとの例に使われる。百害あって一利なしだ」と一喝。昨年11月、首相が消費税再増税を先送りして解散したことには、「消費税と解散がどうして論理的につながるのか全く理解できない」と疑問を突きつけた。こんなエピソードもある。
 
 2007年に民主党の議員がUFOの認識を問う質問書を提出。政府は、「UFOの存在は確認していない」とする答弁書を出したが、当時の町村氏は、「絶対にいる。そうじゃないと、ナスカの地上絵なんて説明できない!」と力説していた。
 
 紋切り型の答弁かヤジしか口にしない議員が多いなか、その言を楽しみにできる政治家だった。合掌。

※週刊ポスト2015年6月19日号

関連記事

トピックス

この日は友人とワインバルを訪れていた
《「日本人ファースト」への発言が物議》「私も覚悟持ってしゃべるわよ」TBS報道の顔・山本恵里伽アナ“インスタ大荒れ”“トシちゃん発言”でも揺るがない〈芯の強さ〉
NEWSポストセブン
亡くなった三浦春馬さんと「みたままつり」の提灯
《三浦春馬が今年も靖国に》『永遠の0』から続く縁…“春友”が灯す数多くの提灯と広がる思い「生きた証を風化させない」
NEWSポストセブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《産後とは思えない》真美子さん「背中がざっくり開いたドレスの着こなし」は努力の賜物…目撃されていた「白パーカー私服での外出姿」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこ(45)の自宅マンションで身元不明の遺体が見つかってから2週間が経とうとしている(Instagram/ブログより)
《遠野なぎこ宅で遺体発見》“特殊清掃のリアル”を専門家が明かす 自宅はエアコンがついておらず、昼間は40℃近くに…「熱中症で死亡した場合は大変です」
NEWSポストセブン
俳優やMCなど幅広い活躍をみせる松下奈緒
《相葉雅紀がトイレに入っていたら“ゴンゴンゴン”…》松下奈緒、共演者たちが明かした意外な素顔 MC、俳優として幅広い活躍ぶり、174cmの高身長も“強み”に
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン