――文系・理系の区別なく幅広い知識を得た後に専門性を深めるリベラルアーツの重要性が叫ばれている一方で、いまの文科省の方針は逆行している。

安田:企業だってバランスよく発展するためには、一部のエリートだけがリベラルアーツをやっても意味がなく、みながいろんな発想のできる豊かな裾野を持っていることが必要なんです。

 もっと大きな話をすると、人文科学的な素養がないとクリティカル・シンキング(批判的思考力)が育ちません。国や政治家の恣意的な言動に対し、「本当にそれでいいのか」と自分の頭で懐疑的な姿勢を持つことこそ人文主義の精神です。もし、人文科学をまったく勉強しなくていいということになれば、極端にいえば権力者による政治をやりやすくさせてしまうのです。

――日本の国民性にまで結びついてしまう由々しき事態だと。

安田:誰もが無批判で長い物に巻かれる状況になってしまうでしょう。かつてユダヤ人の女性哲学者、ハンナ・アーレントさんが「悪の凡庸さ」が蔓延しているとして、〈飢えや迫害、戦争で苦しむ人々への無関心〉〈メディアの情報や社会のムードに無批判でいること〉〈強い人のいうことを鵜呑みにして自分の頭で考えないこと〉――の3つを指摘しました。これは、いまの日本国民にも当てはまっていると思います。

――そんな国の先行き不安は文科省にはどこ吹く風。国立大学も運営費交付金をこれ以上減らされては困ると、文系学部の廃止が行われていく流れは加速するだろう。

安田:地方のローカル大学は専門の職業人だけを育成し、地元に貢献することばかり求められていくでしょう。しかし、それぞれの地域にいろんなことをやりたい学生がいるわけで、「○○県の高校生の進路は○○と○○」と絞られたら、学生たちの視野も狭まるだけです。

――どんなカリキュラムなのか分からない“文理融合学部”の新設が増えていくかも。

安田:文科省は「社会的要請の高い分野への転換」などといっていますが、社会的ニーズなんて時代ごとに違うわけで、その都度学部を作り替えるよりも、いろんな変化にもそれなりに対応できるベーシックな力をつけておいたほうがいいに決まっています。

 そのためにも人文科学系の学部は必要で、私は「文系不要論」が高まっていくことに強い危機感を覚えます。

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