ビジネス

国立大学の文系縮小策「無批判な国民性生む危険あり」と識者

国立大学の文系縮小は受験生にどんな影響を及ぼすか

 日本の大学から文系学部がなくなってしまう――。6月9日、文部科学省が全国の国立大学に人文社会科学や教員養成の学部、法科大学院などの縮小や廃止を求める通知を出したことで、こんな懸念が広がっている。

 確かに新卒採用の現場では、理系学生の「即戦力」強化や専門職育成を掲げる企業が増えたが、果たして人文学系の学問は本当に不要なのか。安田教育研究所代表の安田理氏に聞いた。

 * * *
――歴史や哲学、言語などを学ぶ人文科学系の学部は、社会に出て役立たないといわれてきた。

安田:そもそも大学とは、すぐに役立つ実学ばかりを教育するところではありません。イタリアのボローニャ大学をはじめ歴史的に古いヨーロッパの大学では、哲学や神学を学ぶ学部がルーツになっていて、工学部などはありません。いわば“純粋学問”をやるのが大学の本来の姿なのです。

――日本の国立大学は2004年に法人化されて以降、学生の専門化を求める声がますます強まっている。

安田:国の文教予算そのものが減っている中で、どう効果的に使っていくかという問題が背景にあるのでしょうが、経済界から要望の声が高いのも事実です。昔なら「白紙の状態で入社してくれれば、あとは社内研修で育てます」といっていた企業が、その余裕がなくなったために大学に専門教育を望むようになった。

――企業の中にもいろんな職種があり、理系ばかりが即戦力とは限らない。

安田:文系で法学部、経済学部といっても、みなが弁護士になるわけではないし、エコノミストになるわけでもありません。国際経済を学ぶより簿記でもやってくれたほうがいいという現実的な意見があるのは事実です。

 でも、人間は必要なことだけをやっていたら視野が狭くなり、次第に物事を客観的に見られなくなります。その点、幅広い人文科学系の学問を身につけておけば、社会ですぐに役立たなくても裾野を広く持つことで、何かを具体化する際に活きてくる。「高い山ほど裾野が広い」のと同じです。

関連記事

トピックス

還暦を過ぎて息子が誕生した船越英一郎
《ベビーカーで3ショットのパパ姿》船越英一郎の再婚相手・23歳年下の松下萌子が1歳の子ども授かるも「指輪も見せず結婚に沈黙貫いた事情」
NEWSポストセブン
ここ数日、X(旧Twitter)で下着ディズニー」という言葉波紋を呼んでいる
《白シャツも脱いで胸元あらわに》グラビア活動女性の「下着ディズニー」投稿が物議…オリエンタルランドが回答「個別の事象についてお答えしておりません」「公序良俗に反するような服装の場合は入園をお断り」
NEWSポストセブン
志穂美悦子さん
《事実上の別居状態》長渕剛が40歳年下美女と接近も「離婚しない」妻・志穂美悦子の“揺るぎない覚悟と肉体”「パンパンな上腕二頭筋に鋼のような腹筋」「強靭な肉体に健全な精神」 
NEWSポストセブン
「ビッグダディ」こと林下清志さん(60)
《還暦で正社員として転職》ビッグダディがビル清掃バイトを8月末で退職、林下家5人目のコンビニ店員に転身「9月から次男と期間限定同居」のさすらい人生
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を訪問された佳子さま(2025年8月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《日帰り弾丸旅行を満喫》佳子さま、大阪・関西万博を初訪問 輪島塗の地球儀をご覧になった際には被災した職人に気遣われる場面も 
女性セブン
鷲谷は田中のメジャーでの活躍を目の当たりにして、自身もメジャー挑戦を決意した
【日米通算200勝に王手】巨人・田中将大より“一足先にメジャー挑戦”した駒大苫小牧の同級生が贈るエール「やっぱり将大はすごいです。孤高の存在です」
NEWSポストセブン
侵入したクマ
《都内を襲うクマ被害》「筋肉が凄い、犬と全然違う」駐車場で目撃した“疾走する熊の恐怖”、行政は「檻を2基設置、駆除などを視野に対応」
NEWSポストセブン
山田和利・裕貴父子
山田裕貴の父、元中日・山田和利さんが死去 元同僚が明かす「息子のことを周囲に自慢して回らなかった理由」 口数が少なく「真面目で群れない人だった」の人物評
NEWSポストセブン
8月27日早朝、谷本将志容疑者の居室で家宅捜索が行われた(右:共同通信)
《4畳半の居室に“2柱の位牌”》「300万円の自己破産を手伝った」谷本将司容疑者の勤務先社長が明かしていた“不可解な素顔”「飲みに行っても1次会で帰るタイプ」
NEWSポストセブン
国内未承認の危険ドラッグ「エトミデート」が沖縄で蔓延している(時事通信フォト/TikTokより)
《沖縄で広がる“ゾンビタバコ”》「うつろな目、手足は痙攣し、奇声を上げ…」指定薬物「エトミデート」が若者に蔓延する深刻な実態「バイ(売買)の話が不良連中に回っていた」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
【美しい!と称賛】佳子さま “3着目のドットワンピ”に絶賛の声 モード誌スタイリストが解説「セブンティーズな着こなしで、万博と皇室の“歴史”を表現されたのでは」
NEWSポストセブン
騒動から2ヶ月が経ったが…(時事通信フォト)
《正直、ショックだよ》国分太一のコンプラ違反でTOKIO解散に長瀬智也が漏らしていたリアルな“本音”
NEWSポストセブン