国内

弘前城天守が70m引越し 一生に一度見られるかどうかの珍事

解体せずに70m移動させる予定の弘前城天守

 桜の名所として知られる青森県の弘前城は、津軽藩祖・津軽為信が計画し、2代目藩主・信枚(のぶひら)が慶長16(1611)年に完成させた。3階3層の天守は全国に12しかない現存天守の一つで、国の重要文化財に指定されている。

 その天守が10年間かけて実施される石垣大修理のため、8月下旬から3か月かけて約70メートル離れた本丸中央に一時、引っ越しする。

 天守を解体せずにそのままの状態で移動させる「曳屋」(ひきや)という方法がとられる。弘前城天守の「曳屋」は実は2度目。明治~大正期の石垣修理の際に行なわれているが、全国の他の天守では例がなく、ファンにとっては一生に一度見られるかどうかの珍事なのだ。

 1か月前に閉館した天守は展示物も撤去されて片付けが完了。天守台の石垣には作業用の足場が組み立てられ、移動ルートを確保するための樹木の移植などが着々と進められている。

 100年前の「曳屋」は丸太を並べて人力で動かしたのではないかと推測されているが、今回は高さ14.4メートル、総重量約400トンに及ぶ天守を台車にのせ、背後から推進ジャッキで押してレール上を動かしていく。弘前市公園緑地課の神雅昭主幹が解説する。

「レールが設置された後、慎重を期して1日50センチ~1メートルずつ前進させます。序盤は高さ2~3メートルのレールの上を直進しますが、難しいのが途中の方向転換。1メートル下げたレールの上に天守をジャッキダウンした後、約30度回転させます。どんな光景が広がるのか私にも想像がつきません。移動中は展望デッキを特設しますので、ぜひ見学に来ていただきたい」

 天守台の石垣が修理された後、引っ越した天守は2021年に再び元の位置に戻される。

撮影■佐藤敏和

※週刊ポスト2015年6月26日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン