サッカーの女子ワールドカップ1次リーグでは格下相手にすべて1点差勝ちで、ヒヤッとする場面も多かったなでしこJAPAN。それだけに21日(日本時間)から始まる決勝トーナメントに向けて不安を感じるファンは少なくない。だが、心配は無用。強豪相手に勝利する策はある。
むしろ、僅差で勝ってきたから期待がもてる。そう語るのはスポーツジャーナリストの西部謙司氏だ。
「飛び抜けた強さはないが、試合運びのうまさや、相手への対応術の巧みさで競り、勝っていくのがなでしこのスタイル。しかも佐々木則夫監督は試合を通じて、決勝トーナメントを見据えてさまざまな戦術を試してきた。それを1次リーグでできたことは大きな収穫です」
大会前になでしこの課題として挙げられていたのは、選手の世代交代が進んでいないことだった。今大会に登録された代表23人のうち、17人が4年前のドイツ大会の優勝メンバーである。
相手チームがディフェンディングチャンピオンを研究し尽くしていることを考えれば、メンバーがほとんど変わらないことは大きなマイナス要因だ。佐々木監督はその課題を1次リーグで克服する狙いだったという。
「スイス戦、カメルーン戦、エクアドル戦と1戦ごとにメンバーを大幅に入れ替え、3試合で23人全員を出場させた。主力を休ませるために選手を入れ替えることはあるが、1位突破を目指しながらこれほどメンバーを入れ替えるのは異例のことです」(サッカー担当記者)
先発メンバーが固定されなければ、決勝Tで対戦する相手が対策を練るのは容易ではない。前出・西部氏はこう語る。
「基本的に4-4-2の形は変えていないが、人を代えることでサイド攻撃を重視する布陣にしたり、中央からの攻撃を重視する布陣にしたりしていた。チームとしてベストメンバーを固定するのではなく、“試合ごとのベストメンバー”を試していた」
すべては決勝Tを見据えてのことだ。
前回大会でなでしこが見せた細かいパスをつなぐスタイルは、それまでの女子サッカーにはないものだった。しかし、強豪国は4年間でなでしこのサッカーを徹底的に研究し、今大会では同じスタイルを導入している国も多い。スピードとパワーで上回る相手に“なでしこのサッカー”をやられたのでは日本は不利だ。
「だから佐々木監督は、早いタイミングでパスを縦に入れて攻撃の速さを出すなど、新しい戦術を導入しようとしている。
1次リーグではパスが不正確で、もったいないボールの失い方をしているケースが目立った。決勝Tではミドルパス、ロングパスの正確性が求められます」(スポーツジャーナリストの財徳健治氏)
※週刊ポスト2015年7月3日号