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警察庁幹部 手記出版した酒鬼薔薇の悪のカリスマ化に危機感

 1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件の犯人で「酒鬼薔薇聖斗」こと「少年A」の手記『絶歌』(太田出版)が6月11日に刊行されベストセラーになっている。手記は初版10万部に加え、5万部の増刷が決まったとされる。仮に印税10%とすると、Aは2000万円以上を手にする計算だ。

『「少年A」14歳の肖像』(新潮社)などの著書がある作家の高山文彦氏が指摘する。

「『絶歌』は、これが最初で最後の告白という意味でしょう。深い内省や苦悩も見られない低レベルの“私小説”で終わりにしようなんて、ムシがよすぎる。手厚い更生プログラムを経て社会に出た彼は、今度は特定の出版社に手厚く保護されて華々しく作家デビューしようとしている。多額な経済的利益も得た。『独我論』(*注)の復活を危惧します。出版社の責任は重大です」

【*注:「この世にあるすべてのものは自分の自我とそれが産み出したものたちであって、他者や彼らが形成しているものは、自分の自我の投影に過ぎない」といった歪な精神構造のこと。Aは精神鑑定で独我論を指摘されていた】

 多額の印税を手にした元・酒鬼薔薇聖斗はいまどこにいるのか。警察庁幹部の話だ。

「少年院を退院して数年後まで、警視庁や兵庫県警などの刑事部や公安部、更生を担当した法務省がAの動向を“監視”していた。公安部が注視していたのは、極左集団がAを政治活動に利用するため英雄視し、接触を図る危険性があったからだ。

 事件から18年経ったいま、Aの動向を捕捉しようとしているのは法務省のみだが、そもそも法務省にはAを追跡する人員もスキルもない。今回の手記出版で、再びAが“悪のカリスマ”として注目を浴びていることには危機感があるが、居場所を掴めていない」

 事件後入所していた医療少年院では「作家になりたい」という将来の夢を語っていたAだが、被害者遺族の心情を蹂躙することで叶えた醜き「中年A」。その本質が変わっていないのだとしたら、次に自己の虚栄心を満たすために、何をしようとしているのか。

※週刊ポスト2015年7月3日号

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