芸能

能は「男が女役やってる宝塚みたいなもの」と人気能楽師

 歌舞伎、能、文楽など伝統芸能に見いだされる“日本なるもの”をノンフィクション作家・上原善広氏が浮き彫りにする新シリーズ「日本の芸能を旅する」。今回紹介する若手能楽師、武田宗典氏(37)は、海外公演や現代アートとのコラボなど多彩な活動で知られる。

 * * *
 武田宗典は二歳十一ヵ月で初舞台を踏み、能楽師として育てられた。しかし、10代後半になると、興味はミュージカルや現代演劇の方へ移っていく。

「父は能をやれ、と言ったことはありませんでした。それが逆にプレッシャーになっていたくらい、何も言わなかった。ミュージカルや演劇をやっていて良かったのは、沢山の出会いとか、いろんな視点が得られるようになったことですね。それで一九歳のときかな、能楽師になろうと決心したのです。だけど父の時代はまだバブルを挟んでいたけど、私が能楽師になったときはもう、日本経済もどん底でしたからね(笑)」

 父、武田宗和はこう語る。

「息子から大学に行きたいと言われたとき、『それは視野が広がるし友達も増えるので良いんじゃないか』と言うと、『大学の間は好きなことをやらせてください』と本人から言われたのです。『そうすると同年代の人より、能楽師として少し遅れてしまうことになるよ』と言うと、『それでも構いません』という事だったので、その時はもう、他の職についても構わないと……。能楽師としてやるのは、相当な覚悟が要ります。だから本人が決めないと、こればっかりはいくらこっちが仕込んでも無理ですからね」
 
 能の舞台では、本番の申し合わせ(リハーサル)は前日の一回のみ。大鼓、小鼓、太鼓、笛の囃し方それぞれ一名ずつ。地謡(コーラス)八名、ワキ方、後見など、その日の舞台や演目によって多少違うが、だいたい一五名ほどが舞台に集結して、通しを一回だけやる。衣装も能面も、本番当日までつけない。こうすることで自然と緊張感が生まれ、本番ではジャズ・セッションのような効果が出るのだ。

 今年、三七歳になる武田宗典は、この四月に「熊野(ゆや)」を初演した。昔から「熊野松風、米の飯」と言われるほどの人気曲だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン