それを原監督はキャンプ中、「自主性に任せる」などと放任しただけでなく、バッティングケージ裏に原タワーなる櫓を作って、女子アナを座らせてニコニコ、ぺチャクチャやっていた。本来はキャンプ中、監督にあんなヒマはないの。
それでいてシーズンでは「戦力が足りない」などと言い始め、打線を猫の目のように変える。自分が何もしなかったことを証明しているようなものです。巨人の野球とは大将、4番がどっしり座って軸を作るのが伝統。現体制では阿部が適任です。慌てて坂本や亀井くらいの打者に打たせているようではダメです。
最近はようやくそれに気づいたのか、原監督が自ら“大将”阿部に直接打撃指導を行なったと聞きました。それによって阿部はホームランを打てるようになった。大将が打ち始めると相乗効果で前後も良くなるんですよ。まァ、それに気づいただけでも進歩ですけどね。
本来はこうした巨人の帝王学を、前任の長嶋(茂雄)が原に教えておくべきだった。しかしそれをしなかったのが問題だった。
長嶋が勇退する際、原を後継者として推したのは私です。彼が父親である貢氏の指導法を肌で知り、そのDNAを引き継いでいると思ったからでした。そういえば原の采配は、昨年父親が亡くなってからおかしくなりましたね。今の巨人の野球は、本来の巨人の野球とはまったくの別物であることをお伝えしておきたい。
原監督は今年で任期満了だという。今年、優勝を果たしたのちに、「日本球界のため、弱いチームで監督をやります」と宣言してほしい。ファンは大喝采すると思いますよ。一度弱いチームでやってみれば、私のいうこともわかってもらえると思うのですが。
●ひろおか・たつろう/1932年、広島県生まれ。早大を経て1954年に巨人入団。新人王を獲得するなど活躍し、その後も優れた守備力で巨人の中心選手として活躍した。引退後は広島コーチを経て、まだ弱小球団だったヤクルト、西武の監督に就任し、リーグ優勝4回、日本一3回に導いた。
※週刊ポスト2015年7月31日号