国内

4年3か月ぶり全線開通仙石線 最短52分で仙台石巻結ぶ

 夏休みにどこに行こう? もしまだ迷っていらっしゃるようでしたら、宮城県石巻市はいかがでしょう。今春、石巻は東京からグンと近くなりました。コラムニスト木村和久さんが高校卒業までを過ごした石巻を歩く「石巻なう」特別編の今回は、その感動の軌跡を綴ります。

 * * *
 この日がやってくるのを、どれだけ待ちわびたでしょうか。仙台と石巻を結ぶ、JR仙石線が5月30日、4年3か月ぶりに全線開通となりました。いや長かった、これほど待たされるとは。実は津波の影響で、線路を移設して新しく造ったため、工事が延びていたのです。

 もちろん開通当日、東京から新幹線に乗って、お祝いに駆けつけました。朝からなぜか、東京駅で豪華駅弁を奮発して買います。すこぶるハイテンションで、宮城路へ向かったのでした。

 仙台から、新しくできた「仙石東北ライン」に乗ってみます。仙台と石巻を結ぶのが仙石線ですが、実は途中の松島まで東北本線が並行して走っています。そもそも仙石線はその昔、宮城電鉄という私鉄で、駅と駅との間隔が短いのです。だから駅が少なくスピードの出せる東北本線で、松島近辺まで来て、それから列車は仙石線を走るようにして、乗客の利便性を図ったのです。

 この仙石東北ラインのために、JR東日本はハイブリッド車両なる新型車を導入しました。気合が入ってますね。始発の仙台から、結構な数のお客さんが乗車しています。なかには宮城ローカルのテレビクルーもいて、早くもテンションは高くなります。

 石巻へ向かうとき、ちょうど松島あたりから、海が見え始めます。やがて、新しく移築した野蒜駅へさしかかろうとしたとき、隣にいたおばさんが、すっくと立ち上がり、遠くの海を見だしたのです。

「どうしたんですか?」とぼくが聞くと、

「震災のとき、野蒜の病院にいて、家族から死んだと思われたのよ。診察が早く終わったので無事だったけど、お互い連絡が取れるまで、生きた心地しなかったわ」

 おばさんはそう言うや、涙ぐみながら「あ~、こうなっているのね~。まだ震災のままだわ」と感慨深げに、旧野蒜駅とその先に広がる海を見ていました。こちらも思わず涙ぐみ、お互いの震災苦労話を語りあいました。

 いろんな思い、悲しみ、そして喜びを乗せて一路石巻へ。途中沿線からは、たくさんのかたがたが手を振ってくれています。終点石巻では、ちょうどアニソン歌手の水木一郎さんが、仙石線のホームで開業イベント中。水木さんが電車の発車の合図をかけたそうですが、かなりの人だかりができていて、もう何がなんだかわからない状態になっていました。

 というわけで、めでたく開通となり、仙台と石巻間は、最短52分で結ばれました。以前は小牛田という駅を経由して乗り継ぎ、2時間弱ぐらいかかったでしょうか。当時は「東京~仙台より遠い、仙台~石巻」といわれていましたから。これでまた頻繁に石巻に顔を出せそうです。

※女性セブン2015年8月20・27日号

関連キーワード

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン