スポーツ

金田正一氏が後悔「名球会の入会基準が記録への執着生んだ」

名球会の入会条件についての後悔を語る金田正一氏

「今の連中は何もわかっとらん!」ペナントレースを見つめる球界の重鎮たちは、異口同音にこう苦言を呈す。400勝のレジェンド・金田正一氏が現在のプロ野球にもの申す。

 * * *
 ワシが長嶋(茂雄)と王(貞治)とで「名球会」を作った時、決めた入会条件は、投手で通算200勝、野手で通算2000本安打だった。当時は達成が難しい条件で、名実ともに「名選手」が名を連ねていた。
 
 しかしこれだけ試合数が増え、現役を長く続ける選手が出てくるとは想像もしなかった。200勝はまだしも、2000本安打は細く長く現役を続ければ誰でも到達できる数字になってしまった。
 
 しかもこうした数値目標を作ってしまったせいで、「記録」というものに執着する風潮を生み出してしまった。だからワシはひどく後悔している。
 
 例えば先日、谷繁(元信・中日)が野村(克也)の持っていた通算試合出場の記録(3017試合)を塗り替えた。また、同じ中日の山本昌は、メジャー記録であるJ・モイヤーの49歳6か月での史上最年長勝利の更新を狙っているという。
 
 ちょっと待て。記録の前に中日は今何位だ。セ・リーグで唯一蚊帳の外の最下位ではないか。チームがそんな状態で作る個人記録に何の価値がある。
 
 同じ通算試合出場記録なら、30本しかホームランが打てなくなったことを理由に潔く引退した王(貞治)の2831試合の方が、ずっと価値がありますよ。投手の最年長記録? どうでもいいわ。
 
 記録を作るためだけに現役を続けているようにしか見えない。最下位を突っ走るチームで、ロートルが若い選手の出番を奪って記録を目指すなど愚の骨頂ですよ。ワシか? ワシが400勝を達成して引退したのは30歳半ばだ。投げようと思えばまだ投げられた。チームもV9の真っ最中で、毎年優勝していたわい。
 
 まァ、2人は名指しにして悪かったが、両者とも十分な実績があるからこその苦言だ。とっくに現役を退いて後進を育てる仕事に集中しなくてはならないことは自分が一番わかっているはずだからね。ボロボロになってでも記録に執着する選手が多すぎるよ。

●かねだ・まさいち/1933年、愛知県生まれ。国鉄、巨人で活躍。球界唯一の400勝達成をはじめ、365完投、4490奪三振、5526.2投球回など、数々の日本記録を持ち、圧倒的な実力と存在感から「天皇」と呼ばれた。引退後はロッテ監督。

※週刊ポスト2015年8月21・28日号

トピックス

かりゆしウェアのリンクコーデをされる天皇ご一家(2025年7月、栃木県・那須郡。撮影/JMPA) 
《売れ筋ランキングで1位&2位に》天皇ご一家、那須ご静養でかりゆしウェアのリンクコーデ 雅子さまはテッポウユリ柄の9900円シャツで上品な装いに 
NEWSポストセブン
注目度が上昇中のTBS・山形純菜アナ(インスタグラムより)
《注目度急上昇中》“ミス実践グランプリ”TBS山形純菜アナ、過度なリアクションや“顔芸”はなし、それでも局内外で抜群の評価受ける理由 和田アキ子も“やまがっちゃん”と信頼
NEWSポストセブン
中居、国分の騒動によりテレビ業界も変わりつつある
《独自》「ハラスメント行為を見たことがありますか」大物タレントAの行為をキー局が水面下でアンケート調査…収録現場で「それは違うだろ」と怒声 若手スタッフは「行きたくない」【国分太一騒動の余波】
NEWSポストセブン
定年後はどうする?(写真は番組ホームページより)
「マスメディアの“本音”が集約されているよね」フィフィ氏、玉川徹氏の「SNSのショート動画を見て投票している」発言に“違和感”【参院選を終えて】
NEWSポストセブン
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
皇室に関する悪質なショート動画が拡散 悠仁さまについての陰謀論、佳子さまのAI生成動画…相次ぐデマ投稿 宮内庁は新たな広報室長を起用し、毅然とした対応へ
女性セブン
スカウトは学校教員の“業務”に(時事通信フォト)
《“勧誘”は“業務”》高校野球の最新潮流「スカウト担当教員」という仕事 授業を受け持ちつつ“逸材”を求めて全国を奔走
週刊ポスト
「新証言」から浮かび上がったのは、山下容疑者の”壮絶な殺意”だった
【壮絶な目撃証言】「ナイフでトドメを…」「血だらけの女の子の隣でタバコを吸った」山下市郎容疑者が見せた”執拗な殺意“《浜松市・ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
【体にホチキスを刺し、金のありかを吐かせる…】ルフィ事件・小島智信被告の裁判で明かされた「カネを持ち逃げした構成員」への恐怖の拷問
NEWSポストセブン
「情報商材ビジネス」のNGフレーズとは…(elutas/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」は“訴えれば勝てる可能性が高い”と思った》 「情報商材ビジネス」のNGフレーズは「絶対成功する」「3日で誰でもできる」
NEWSポストセブン
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン