景気は循環します(このあたりを詳しく語りだすと長くなるのですが、ここではざっくり、こう言います)。採用時にいい想いをしても、その後、悪くなる時がやってくるわけです。入社して、仕事に慣れてきた頃に景気が悪くなり、仕事をする環境が辛くなる上に、会社が合わなくて転職したいと思ったら中途採用の求人が少ないということが起こり得るわけです。
人材紹介会社経由で転職しようとする場合、キャリアカウンセラーは「売り手市場で世に出た人は、考えが甘い」と敬遠する場合もあります。そう、彼らの経験則でありますが、この時期に社会に出た人は考えが甘い、能力が怪しいということもよくあるとのこと。
また、この局面は就活も採用活動も雑になることがあるのですね。前出のリクルートキャリアのデータを詳しく読むと、採用広報活動開始から4カ月目時点の比較をすると、ここでの就職内定率は2014年卒4.5%、2015年卒5.5%、2016年卒34.5%となっていて、今年度は突出して高いわけです。
就活を始めたばかりの学生にこれだけ内定が出ている年はこの10年くらいでは無いと言っていいでしょう。最終的に行く1社は後で内定が出た会社だとしても、業界・企業研究不足のまま、考えも固まらないまま内定が出ているという可能性は否定できません。
さらに、この局面は、求人広告をつくる就職情報会社も雑になっている可能性があるのです。このような局面においては、就職情報会社自体が新卒採用・中途採用を強化し、営業担当者を増やします。人材ビジネスに慣れていない、新米の営業担当者が顧客に営業し、求人広告作りに関わるわけです。いくらその上の管理職などが品質を担保しようとしても、雑になる可能性はあるわけです。
逆に、求人環境が悪い時期に社会に出た人は、考えが大人になっている、社会の厳しさを知っている、その後、景気が良くなる(ことが期待される)ので仕事がやりやすくなる、転職もしやすくなるなどのメリットがあるのですね。就活中は、本人はそんなことを考える余裕がないとは思いますが。また、厳しい時期に社会に出た層から社長が出ていたりするのですよね。
というわけで、内定がいくら出たところで、こういう時期こそ浮かれてはいけないのです。もちろん、売り手市場か買い手市場かを学生は決めることができません(まあ、大学院進学、留学などで社会に出る時期を遅らせることは可能ではありますが)。入社する1社を決める前に、今一度、業界・企業研究をしておきましょう。
業界内でのポジションを再確認する、5カ年計画を比較する、社風が合ってそうかを考える、一生勤めても数年でやめるにしてもそこで働いて得られるものを考える、この人たちと働きたいと思うかどうかなど、諸々考えましょう。
売り手市場も楽ではないというお話でした。